ブームが生み出すローカルの新たな魅力を発信していくには?《かがわコラム》

数年前に日本のアニメ界にひとつの革命が起こった。君の名は。の超ロングヒットである。

 これまでのアニメヒットの法則とはひと味もふた味も違った

筆者はちょうど興行収入100億円突破の前後で映画館に行ったが、公開一ヶ月経っても一番大きなスクリーンで朝から夜までフル回転で上映していた。観客の入りも良くほどなく150億円を軽く突破し、当時は勢いはとどまるところを知らないといった感じであった。絶好調のブーム。

当時、各種メディアの解説記事を見ると、リピーターが何回も足を運んでいたとの情報もあるし、ファミリーやカップルだけではなく、あまりにも社会現象になったことで、普段はアニメ映画など見に行かないような年齢層や属性の人々までもが、わざわざ映画館を訪れたという様子もあるようだ。

この映画は最近おきまりのテレビ局タイアップの前宣伝も効いていた、公開前の露出もなくいったいどんな内容なのかあまり話題になることがなかった。また映画の題名が昔聞いたことのある、あのヒット映画と勘違いする人も結構出たという程度の認識であった。

世界的に人気のあのジブリ映画を超える映画が、全く新人の監督が作ろうとは思わなかったし、実際に観ると思いがけない話の展開を迎えるシナリオがまず秀逸であることに驚いた。前評判の頃から一番言われていたことだが「映像美」がことのほか素晴らしいので、映画を観た後はアニメ作品なのに言いしれぬ爽快感に圧倒された。普段アニメ映画を観ることのほとんどない層の口コミにつながったのだ。まるで実写映画ののように。

これが誰かにこの感動を伝えなくてはという強い思いにつながり、一斉にソーシャルメディアにその気持ちをすぐに書き込み、それを見た人がなんかいいらしいよとじわじわ、そして一気に広がったというのがヒットした理由と理解出来た。

 アニメの舞台となった場所がヒットの法則に関連して盛り上がる

平成最後に生まれたメガヒット映画の誕生に、今のヒットの法則が隠されているような気がした。

個人的には映画の中で重要な役割を持つ湖のモデルが、生まれ故郷に近い信州の諏訪湖にそっくりだというところが琴線が触れた。信州は新海監督にとっても生まれ故郷で、筆者もこの湖には小さい頃よく訪れた。アニメ作品とはいえ、こうしたモデルになっている町や風景を目にするのが、作品への思い入れを深くするのだろう。

一方、町のモデルになったと言われている岐阜県飛騨市には映画館そのものがないという皮肉な出来事もあった。これがローカルの置かれた現状でもあったのだ。結果、市民が映画の内容に理解を持っていないため、その後、聖地巡礼に続々と来るファンとの交流や会話に苦労するといった地方の抱える皮肉な問題も。それほど地方における映画文化の継承は難しくなっている現実があるのである。

 

 テレビにおいて静かにスタートしたご当地アニメ作品がある。「うどんの国の金色手鞠」。西日本放送も製作委員会に名を連ね、地元出身の作家の作品を丁寧に映像にした。日本テレビはじめ地上波数局とBS・CS局と、各動画視聴サイトで毎週全国ネット放送が注目される動きとなった。香川県観光協会も全面的に協力し、ほっこりしたさぬきのおだやかな雰囲気がよく出た作品に仕上がっていた。

積み上げた文化の厚み、ローカルが生み出す文化のパワー

プロ野球の世界でもローカル球団の革命が起こっている。2016年シーズンのプロ野球は広島カープと、北海道日本ハムファイターズのローカル球団同士という新鮮な顔合わせが注目された日本シリーズ。誰がそれまでこのような組み合わせでのシリーズの戦いを予想しただろうか。

広島カープにはスーパースターはいないが、生え抜きの選手達が躍動するチーム野球、日本ハムはまだ大リーグに向かう前の大谷という注目のスーパープレイヤーが引っ張っていた印象もあったが、ドラフト獲得の生え抜きの選手達が成長しているという印象だった。

 広島はご存じのように親会社を持たない市民球団として、これまで身の丈野球に徹してきた。ドラフトで指名した選手達を二軍から厳しく鍛えて一流に育てる。日本ハムが親会社のファイターズも、東京ドーム時代の明確なファン層がはっきりしない中途半端な立ち位置から、思い切って北海道に移転して、地域密着の考え方を前面に出した。ドラフト選択も明確な構想のもとに指名し、あっというまにおらが地域の自慢のチームへと生まれ変わった。

 北海道はもともと巨人のファンが圧倒的多数を占めていた地域だ。しかし目の前にかっこいい選手達が気軽にサインをしてくれる上に、一生懸命プレーする姿を見ることの出来る環境が出来て、一気にパリーグ人気に火付け役となった。

ローカルにおける地元愛の熱量はやはり東京とは大きくレベルが違う。そこに熱量を注げるオリジナルなコンテンツさえ造るコトが出来たなら、狭いコミュニティの中でそのパワーは一気に広がるのである。香川県にも強力なコンテンツを育てて行くことの重要性を再認識する話だ。

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