高松市サンポートにある、かがわ国際会議場で11月21日、「KAGAWA WOMAN Summit2015」と題したビッグイベントが盛大に開かれた。
イベントは、㈱香川経済レポート社(高松市古新町 中西透社長)の主催。
小社では働く女性の活躍を後押ししようと今年1月から11月までの間、旬刊「かがわ経済レポート」で新コーナー「KAGAWA WOMAN LEADERS」を企画し、月一回(一人)のペースで掲載。㈱ミシェル(愛媛県松山市)の横田クルミ社長と手を組み、これまで県内の女性経営者、管理職者等11人を紹介してきた。
今回、その集大成としてイベントを実施。11人中5人の女性リーダーたちが一堂に会し、「キャリアアップ」「仕事とプライベートの両立」などをキーワードに、彼女らならではの悩みや取り組み等を、講演とパネルディスカッションを通じて存分に語ってもらった。
この日、会場には県内の女性経営者や幹部社員らなど定員を上回る約180人が来場し満席となった。
プログラムは2部構成。司会進行役・ファシリテーターは、今回のイベントを企画した横田社長が務めた。
第一部の講演会では、大熊智美さん(香川県政策部地域活力推進課主幹)と、馬場加奈子さん(㈱サンクラッド社長)が自身の経験をもとに、女性たちが生き生きと働くための持論を展開。
トップバッターの大熊さんは、「輝く女性がさらに輝くために~今求められる女性リーダー像とは~」と題したテーマで話しを進めた。
今年4月、総務省から香川県に管理職として出向してきた大熊さんは講演に先立ち、「チャンスが巡ってきたらとにかく挑戦すること」と前置きし、「その日に向けて今日から行動を起こすことが大事」と説明。
リーダーの考え方については、特殊な能力やカリスマ性ではなく、「自分の強みを生かして、自分らしいリーダーになればいい」と定義付け。自身の強みは「人の長所を見付ける観察力」と分析し、「メンバーの力を最大限引き出せるリーダー」を目指していることを表明した。
それにつながる能動的な組織をつくるには、部下に一方的に一つの仕事を任せるだけでなく、ミッションの最終ゴールも一緒に伝える「仕事の全体像の共有」が欠かせないとし、その成果のフィードバックも必要だと訴えた。また、傾聴者にも今日から実践してほしいアクションについては、「自分を分析する」「上司をはじめ周りの人を観察する」などを列挙。
さらに、「もし自分が課長や部長、社長ならこの状況をどう判断するだろうか」と、相手の立場に置き換える「視点を上げて物事を考える」ことの重要性を説いたほか、「リーダーは仕事も多く、管理が大変になる」とし、「常に優先順位を考えるように心掛けてみてはどうだろうか」とアドバイスした。
最後のまとめでは、「私には絶対できない」という思い込みを払拭し、「積極的にトライすべきだ」と呼び掛け。結局、「自分らしいリーダーを目指すべき」としたが、まずは目の前の仕事に精いっぱい取り組んでほしいと述懐。今に感謝しつつ、現状に満足しない「ハングリー精神」が大切だと訴えかけた。
引き続き、2011年に学生服のリユースショップ「さくらや」を開業した馬場さんが登壇し、「お母さんの発想からできた小さくても地域に愛されるお店つくり」と題したテーマで話しを展開。
講演の冒頭で馬場さんは店をはじめたきっかけについて「自分の子どもからヒントを得た」と説明。
卒業まで間もない子どもの制服が合わなくなったことを機に、「おさがり」を探すものの、自身は当時、土日もないような仕事三昧で声を掛けられる〝ママ友〟がいなかったことを告白。同じ心境の同僚もいたことから、「学生服のおさがり」に目を付け、起業を決めたと報告した。
しかしその期待とは裏腹に、はじめは信用もなく、全く市場に受け入れられなかったことを吐露。ブログをつかって地道にPRしたり、手作りのチラシをつくって子どもたちと一件一件ポスティングにまわったりと、努力の日々が続いたことも打ち明けた。
また、学生服を中古販売する店は全国にも事例がなかったことを示唆。「こんな店がほしかった」と母親たちに大いに喜ばれた当時を振り返り、「ビジネスチャンスは主婦にもある」と主張。さらに、店は自分で営業時間を決めたため、子どもたちと接する機会が増えたことも明かし、「ワークライフバランスの実現ができるようになった」と話した。
その一方、「女性がどんどん社会に出ていくことは待機児童の増加、食事の準備不足にもつながる」と、女性活躍推進法の問題点を指摘。そんな母子らを支援するため、来年1月から「子ども食堂」を開設すると発表した。
その後、「KAGAWA WOMAN LEADERS Cafe」と題したパネルディスカッションがあり、横田社長の質問に対し、北条沙織さん(JRホテルクレメント高松 総支配人室 企画)、岩田知子さん(高松テルサ館長)、藤岡美樹さん(川鶴酒造㈱製造部統括リーダー)の3人が各々の活躍ぶりや、持論をざっくばらんに話した。
「KAGAWA WOMAN Summit2015」by かがわ経済レポート
横田Q:女性リーダーに必要な素質・能力は?
北条A:「面倒見の良さ」
テレビドラマでよく見かけるお節介さん、世話焼きな方は、なんとなく女性が多いように感じませんか?きっと他人のことが気になる性分は、女性特有なのだと思います。
また、女性は男性に比べて一日に3倍近くの言葉を発していると言われています。そう考えると、コミュニケーション能力は女性の方が高いのかもしれませんね。それを武器に男性の意見を理解しつつ、女性の意見も汲み取れる、そんな能力が求められるのではないでしょうか。
岩田A:「環境の変化を楽しめる行動力」
労働人口が減少するなか、成長戦略では女性の活躍を推進しています。意識せずとも突然、大きな環境の変化が訪れたように思います。
その変化をポジティブに捉え、フットワークを軽くすること。またそこから広がる人との出会いはとても大切だと思いますね。
藤岡A:『謙虚さ・素直さ・信念』
酒造というのは、どうしてもチームプレーになります。
リーダーだからといって偉そうに何でも分かっているような素振りをすれば、周囲の心も離れていきます。正直に「自分が分からないことは分からない」と言える、その謙虚さと素直さが大事だと思います。
でも、「たくさんの人においしい
お酒を飲んでほしい」という信念だけはブレないように心掛けています。
Q:女性活躍のための取り組み事例は?
北条A:『女性スタッフの意見取り入れ』
当ホテルにはレストランやベーカリーショップもありますが、サービス面は女性スタッフにお任せするようにしています。
実は、お昼時にレストランに来られる方は比較的、女性のお客様が多いです。それはベーカリーでも同じです。
男性ばかりの意見で新商品を企画すると結局、男性目線の商品しかつくれません。ですから、最近は特に女性スタッフの意見を取り入れるようにしています。
岩田A:『社内規定制度の充実』
実は育児休暇を取得し、今年9月から復帰した社員がいます。
子どもの突発的な熱や病気のと
きもすぐに休める看護休暇の規定がありますので、女性にとっても働きやすい環境が整っていると思います。
また、周りの女性スタッフにも「育児をしながら生き生きと働けるんだ」というロールモデルをつなげていきたいです。
藤岡A:『得意分野が活かせる職場造り』
社員一人ひとりの得意・不得意な分野を見極め、男女、もしくは個人の良いところを伸ばすようにしています。
特に女性であれば、流行りに敏感だったりもしますので、新商品を企画するときは、主に女性社員からの意見を取り入れていますね。
Q:女性が輝くために必要なことは?
北条A:『女性の意識改革』
女性は結婚や出産を機に、仕事がどんなに好きでも離れなければいけないときがあります。でも会社にとって女性は必要な存在に変わりありません。
自分が本当に仕事を続けたいのであれば、もっと自分の意見を自分なりにはっきりと言えるようにしていくことも大事だと思います。
岩田A:『甘んじない自分』
すべての女性が社会のなかで一人ひとりの能力を発揮してほしいと思います。そのためにも、まわりへの感謝の気持ちはいつも忘れないようにしてほしいです。
藤岡A:『家族や周囲の理解』
結婚となると、女性はやっぱり家族の理解がなければ仕事を続けられないと思います。だから家族への感謝であったり、助けてほしいことであったりと、それを素直に打ち明けるようにしています。
また、小さな子ども抱えていれば、どうしても休まなければいけないときがあります。そこは社員が協力し合い、カバーするようにしていますね。
でも休んだ反面、やるべきことはキッチリすべきだと考えています。休んだ次の日は、帰りが遅くなっても積み残した仕事を絶対にやりきるとか。そんな心掛けが大切なのではないでしょうか。
Q:私らしいワークライフバランスは?
北条A:『やりがいのある働き方』
私は明日すべき仕事を前日に思い描き、それをやりきったら帰るという自分なりのルールをつくっています。
それによって、自分で時間をコントロールできるので仕事の効率もあがっています。
岩田A:『無理をしない』
これまではオフに切り替えたはずが、家に帰宅してからも仕事のことが頭から離れず、ストレスを感じたりもしていました。でも今はそれを受け止めるようにしています。「無理をしない」とは、仕事から無理に離れることをしないという意味です。
そうと決めてからは肩の力が抜け、仕事とプライベートのバランスも取れるようになったと実感しています。
藤岡A:『集中と選択・役割分担』
酒造は冬が本番ですので、夏期は比較的ゆっくりと過ごせるのですが、冬期は休みもほとんどありません。
それは子どもも理解してくれているので、冬は主人が代わりに遊びに連れて行ってくれたり、逆に夏は私が長めに休暇をとって旅行に連れて行ったりしています。
育児にしても家事にしても、親二人が投げ出してしまえば、家族は成り立ちません。ですから、お互いがお互いを助け合えるように必ず相談をするようにしています。
Q:私のストレス解消方法は?
北条A:『リラックス&メンテナンス』
私の場合は温泉に入って身体を休めたり、月に一度はマッサージに行ったりしています。
やっぱり身体は一番の資本です。元気がないと仕事もうまくいきません。ですから、なるべく休みの日は仕事から離れるようにしていますね。
岩田A:『異空間に身を置くこと』
個人的な話しですが、私は昨年の秋から週に一回、茶道教室に通っています。
稽古場の門をくぐって足を踏み入れた途端、そこには私にとって別世界が広がっています。本当に気持ちをリフレッシュできる瞬間です。
藤岡A:『仕事のストレスは仕事で解消』
仕事は大変ですし、苦しいことも多いです。ストレスも溜まります。
だからと言って苦しいときに辞めてしまえば、それがストレスの原因にもなります。でも、どうにか乗り越えさえすれば、そのストレスはなくなっていくものと考えています。
それがスッキリ解決すれば自分を褒めてあげることも忘れません。温泉に出かけたり、みんなとお酒を飲んだりしてモチベーションをあげています。(了)
ー当日の感想ー
「馬場さんの熱量がすごかった。大熊さんの仕事への姿勢のお話しが心にしみた」(サービス業・女性)
「女性が起業する話を実際に聞いたことがなかったので、貴重な機会となった」(サービス業・女性)
「同世代の女性がしっかりした考えを持ち輝いていて共感でき楽しかった。仕事の悩みのヒントになった」(製造業・女性)
「パネリスト達の現場経験からヒントを得た」(女性活躍推進関連・女性)
「5人とも楽しそう。輝く人は自然に人を惹きつけるんだなと思った」(製造業・女性)
「違う業種でも、仕事に対する気持ちの持ち方について参考になった」(その他・女性)