まちなかに溶け込む美術館を造った設計家は高松市の新県立アリーナを手がける“SANAA”

観光地で有名な十和田湖の近くにある街、青森県十和田市に2008年にできた「十和田市現代美術館」が人気だ。

単なる東北の地方都市に誕生した公立美術館なのだが、早くから注目を集めている。

それは美術館が街の中心部に位置するという立地を最大限に生かし、目の前を通る

「官庁街通り」全体も美術館の一部と見立てた上で、空き地だった場所や街頭に

永久アート作品を設置展示してアートが街の雰囲気を醸し出すという手法が面白いからだ。

通り沿いにあった省庁の統合や老朽化で解体されたビル。すでに空き地となっていたそうした

土地を生かしつつ、壮大な「アーツ トワダ」の中核となる箱を建設していく。

十和田市という地方の小都市のメイン通りにひとつの美術館を建て、街の顔を創ると同時に

その街全体を“アートの街”という切り口で、まち自体をステージに屋外アート展示の空間にして

しまおうとしたことはなかなか普通にできることではない。

土地を活用するにしても、商業や業務施設ではない、地方都市にしては他にないアートの

まちづくりを推し進めた非常に珍しい前衛的なプロジェクトなのである。

 

開館記念展として「オノ・ヨーコ展」を開催したのだが、故ジョン・レノンの伴侶だった有名な彼女だが、実はこの美術館のコミッションワークを制作したひとりでもあるのだ。

彼女を含め21名の世界中の新進気鋭のアーティスト達が、この十和田市美術館に集結し、常設展示される作品を制作した贅沢な空間を市民達は楽しんだ。

 芝生で覆われた敷地の中に白い箱を点在するように分散して建物(それぞれが展示室や休憩スペースになっている)を配置。ガラスの通路で結ぶというおもしろい造りを表現。

 この美術館のために制作されたアート作品達に合わせて、彼は間取りや窓の位置、サイズなどの設計に工夫を凝らしているので、各々作品がもっとも映えるように始めから設計し造られている。

そして館内と館外が一体化し、館内にいても開放感溢れ、普段見慣れた街並みもまた違った表情に見える。

 

アート県と言われるようになるにはアートがまだ少ない

香川県も“アート県”を大々的に観光施策の目玉として謳い、アートを使った町おこしを盛んにアピールする。これは瀬戸芸開催で変わる地域を更にアートを媒介にして、活性化をしていこうという一歩先を行く考え方であった。

ところが、県外から観光で高松市内にある高松市美術館香川県ミュージアムを訪れても、本当にここはアート県なの?という意見をもたらしているという話を聴く。

果たして地域と溶け合ってお互い共鳴する役割を果たしているのか疑問が湧く。十和田市くらいなら堂々とそう言えるのだが。

十和田市では官庁街通りにストリートファニチャーなどが並ぶ、“アートストリート”へと変身する大変魅力的で大規模なプロジェクトを行っている。ちなみに十和田市美術館は高校生以下は無料となっている。

西沢氏は横浜国立大学の大学院を卒業後、妹島和世建築設計事務所に入り、その後1995年に共同で「SANAA」という建築ユニットを設立する。2004年の「金沢21世紀美術館」では、一躍世界的に注目を浴びた傑作建築となった。

公立の美術館の運営が厳しい時代の中、一年目から150万人を超える入館者を集め、発展途上のアーティストを中心とした斬新な展示品と相まって、現代美術という世界を身近なものにしたという功績は誰もが認めるところ。

そして2006年には香川県直島で海の駅を設計。世界的に名を知られてきた文化芸術の島「直島」の、表玄関にふさわしいデザインの建物はすでに島になくてはならない空間となった。

2007年にはアメリカ・ニューヨークのマンハッタンの南部の古いビルが立ち並ぶ一角に、忽然と姿を現した白く細長い形の変わったビル「ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート」という、現代美術館でも世界的に注目を浴びている。

またスイス・ローザンヌの「スイス連邦工科大学」内の「EPFLラーイングセンター」を完成させた。他にもこれまでに数々の賞を受賞している世界的な建築家である。

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そして次なる西沢立衛としての作品となったのが、「瀬戸内国際芸術祭」のメイン会場となる島の一つ、豊島での新しい美術館プロジェクト。

豊島の新美術館は、現代美術家の内藤 礼氏の作品展示をする豊島の建物は“水滴”をイメージした曲線の連なる、壁と天井が一体化した柱のない構造体を表現したもので、これは建物と作品が正に一体的に展開された作品だ。

香川県内にはこうした新しい美術館やスタジオが点在、それらを有機的につなぐことで、アート県を標榜するに足りる満足度が上がってくるのではないか。

豊島美術館は当然今までにない工法に挑戦するため、西沢氏はあらかじめ直島に寸尺の模型を作り、どういった工法が適しているか実験したそうだ。

香川県との縁が出来た西沢氏には、ぜひ明日の香川・高松を象徴するようなビックプロジェクトに参画をしてもらいたいと願っていた。

そんな中、現在、高松市のへそであるサンポート高松に建設中の香川県の新体育館(アリーナ)の設計者として選ばれた、SANAA。

地域性を最大限に設計に活かすもので、瀬戸内海に浮かぶ島々をイメージした斬新な設計はこれまでのアート系の美術館建築につながる、斬新なものであり、完成時の世界的な発信が今から楽しみである。

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