自社の成長を見据え、スタートアップ企業を積極支援しはじめた日本の大企業   《かがわコラム》

YouTube」「インスタグラム」日本にとどまらず全世界で利用者数が急増したWEBサービスである。前者はグーグル社、後者はフェイスブック社が運営する。

しかしもともと両社が立ち上げたサービスではない。例えばインスタグラム(I)をフィスブック(F)が買収したのは事業スタートからまだ一年半足らず後のこと。社員数もわずか十三人しかいなかったそうで当然ながら売上はほとんど上がってなかった事業であったが、F社はなんと約10億ドルもの巨費をつぎ込んでM&Aを行っている。

ITベンチャーを創成期に目を付け買収して自社サービスを充実

当時はこうした写真共有アプリと言われる形式が、雨後竹の子のごとく登場した時期ではあったのだが、使い勝手の良さで他を上回る登録者数を獲得していた。その登録者数の多さに将来性を感じた買収だった。

そして当初はアップルの基本ソフト「iOS」向けのサービスのみであったのを、買収直前にユーザー数の多いアンドロイド向けアプリの開発にこぎ着け公開した二日後、米国の有力なベンチャーキャピタル(VC)がなんと五千万ドルもの資金を提供。その4日後にF社がM&Aを発表した。VCの出資時点での企業価値評価の倍の金額で買収された。と言うことはVCはわずか4日足らずで2倍のリターンを得た計算だ。

一夜にして脚光を浴びると価値が何倍にもアップ

常にライバル同士が新たなビジネスのタネを探す。日々生まれる多くのスタートアップの中から自社に取り入れたいビジネスを見出し、成長につながると判断すれば、他を制する様な多額の投資を決断する。

このダイナミックさこそが舞台となるシリコンバレービジネスの醍醐味。日本と米国のスタートアップを取り巻く環境の違いを端的に表していると感じる。

日本は「スタートアップ」で短期の「エグジット」を目的にすると言うよりも「ベンチャー企業」として、ある程度中期の目標を設定ゴールをまずは上場(IPO)に置く。

事業を拡大するための多額の資金を供給する先を探す投資家達

だが日本においてもVCの成長、エンジェル投資家”の出現やこれはと思う企業に多額の投資を行う一部の大企業によって、積極的にM&Aを仕掛けるケースが見られる。

良く引き合いに出されるのが大学発ベンチャー企業。せっかく開発研究された良いアイデアや技術を、世の中のために活かそうと起業しても、資金調達がうまくいかずに挫折するケースが少なからずある。いやそのほうが多い。

大学発ベンチャーでは注目された「サイバーダイン社」(筑波大学発)

人間の身体の機能を拡張補助することが出来る世界初のサイボーグ型ロボット。この技術にいち早く着目した大和ハウス工業が、いち早く10年前に販売代理店契約を結び、介護支援ロボットで介護施設等への販売を順調に伸ばしている。

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日本は大手企業が相次いで、経営不振に陥り、リストラや事業撤退に追い込まれた。硬直化した経営では、新領域への進出をしようにも、人材もスピードも足りていない。

それに替わる役割を担うのがスタートアップ支援の動き。日本企業は海外のファンドなどが社内留保を狙われやすい。では市場拡大を図るべく外国の会社を買うというのでは資本が流出してしまう。しっかりと日本国内で使ってこそ、日本経済の為になる。海外企業の買収も大手企業で成功しているケースよりも、失敗、撤退のケースが目に付く。

四国の企業内でもイノベーションを興す企業内ベンチャー

四国電力では「オープンイノベーション」の手法を活用してスタートアップ企業とのコラボを実現させ、自社が持つ様々なリソースの活用を通じて、企業の成長スピードを加速させる取組を始めた。イチから社内ベンチャーで新規事業を創出する時間を買う。

セブンイレブンが中国地方の店舗の電力を中国電力から関西電力へと乗り換えることを発表するなど、イノベーションは待ったなしと言える。また自然エネルギーを活用する異業種からの電力参入も相次いでいる。

日本航空もスタートアップ企業100社とのコラボ

日本型スタートアップ企業へのサポート体制を更に加速させることこそ、日本経済の成長エンジンになりうる。

企業に所属する会社員の副業解禁も本格的に始まっている。アイデア一つで社会の変革を実現出来る世の中に希望を託したい。大企業には起業に架かる時間と人材を買うということ。いよいよ日本の産業界も構造改革待ったなしではなかろうか。

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