髙松空港でも利用が盛んであった「LCC」はコロナ禍の長期化で存続できるのか? 《かがわコラム》

 LCC(ローコストキャリア)が登場して、日本の空の旅は身近になった。まさに空を飛んでいく路線(高速)バスという感覚である。一足早く国際線で日本の空にお目見えしたこのLCCは、日本の大手キャリア資本が入った企業の参入でこの7〜8年で劇的に変わった。しかし今、その利便性が脅かされている。原因は言うまでもなくコロナウイルスである。

航空機はリースにしろ、購入にしろ飛ばしても飛ばしてなくても毎日、お金が掛かっている。もちろん空港の着陸料や人件費なども同じ事。それがコロナ禍で需要が途切れ、路線を休止せざるを得ない状況になった今、そのコストを支えきれない。

恩恵をしっかり受けていた旅行者は、この先、果たして以前と同じようなサービスを享受出来るのだろうか?

飛行機の旅と言えばマイレージを貯めることがマストだったが、それも運賃のうち

航空会社のマイレージと言えば、“ポイントブーム(ぽい活)”の先駆けとして、また最近では飛行機に搭乗経験がなくても生活の中で貯まるほど、広く一般的に普及した存在となった。

各小売店が発行する自社のポイントカードも、貯まったポイントを自社商品だけではなく、航空マイレージ(航空チケット)に変換出来るケースが増え、これを利用するかしないかのいかんによっては大きな差が出来る。

世界的には2000年前後から始まったこの制度だが、最初は各航空会社の連合(アライアンス)から始まった。いわば顧客の囲い込みからスタートしたものがその後、各業界を巻き込みながら、販促の有効な手段として活用され、それが“マイラー”なる言葉も生み出し人気に拍車を掛けた。

日本国内ではこのサービスを受けようとすると、日本航空と全日空のどちらかとの繋がりになることが多いが、ネット内では各社で貯まったポイントを一括してマイルに交換出来るサイトがあるなど、よく調べないとみすみす無駄にしてしまうケースもあったりする。

特に沖縄県などでは飛行機を使わないと県外のどこにも行けないような地域では、都会よりもマイル獲得意欲が高く、当初から「エディ」が航空マイルと連携した電子マネーの普及率は圧倒的だ。

画像1

先行していたANA系の「EDY」に対抗して、JALがイオングループの電子マネー「WAON」と提携したことで、一気に巻き返しを図っている。マイル欲しさについつい買いすぎてしまう“本末転倒”の事態を招く環境の中、消費者は便利さの裏側で賢い選択と行動が求められている。

 

ある時を境に大きな変革を遂げたマイレージシステム、LCCの登場で拍車化

世界の航空会社は2001年の“9・11”以来、経営環境が激変した。その上原油高も手伝い、生き残りに必死となった。貯めたマイルはいわば航空会社にとっては負債に当たるわけだが、いまや格安航空会社の急進に伴い、既存の航空会社によっては優良顧客のつなぎ止めにはなくてはならない存在となっているのは間違いない。

同じアライアンス内ならどの航空会社に乗っても同じようにマイルがたまるスタイルは、航空会社の違いをあまり意識することなく乗り換えの利便性を維持することにもつながっている。

一昨年までは。

ピーチアビエーションジェットスター、バニラエアエアアジア春秋航空ZIPエアと選べるまでになっていたが、コロナ禍で需要があっという間に消滅してしまった。エアアジアジャパンの経営破綻から始まり、資本力が厚くなかった各社では、経営が一気に苦しくなった。春秋航空はJALグループになった。バニラエアはピーチアビエーションに統合された。

画像2

一機あたりの稼働率の高さで運賃の安さをカバーしているので、稼働率が上がらないと、利用客がいても苦しい。そこで路線撤退をしながら経営資源を儲かる路線に集中していく。ローカル路線では難しく幹線重視になっていった。そうした中で中部空港を拠点にして路線を増やしてきたエアアジア・ジャパンは日本路線そのものから撤退を決断。ジェットスター・アジアも路線の撤退報道が出た。

JALかANA系に集約された日本のLCC

 ピーチアビエーションは、路線撤退報道はなく逆にエアアジアが撤退する中部空港への進出を発表するなど、日本のLCC市場では勝ち組と映る。しかし競合が少なくなれば運賃の高止まりの懸念は出てくる。国際線を主力としていたZIPエアなどは一昨年から運航を始めたばかりで出鼻をくじかれ、太平洋路線を飛ぶモノの先行きは不透明。インバウンド観光客が戻ってこないと、これまでのような路線とダイヤを維持するのは今後更に難しいと思われ、東京オリンピックに合わせた機材繰りや運航態勢の拡大が裏目となっているのは共通。

全日空や日本航空も同じ条件で、両社は稼ぎ頭の国際線がほとんど運休になっているため、機材や運航乗員を休ませながら、国内線中心での運航に特化。大型機を早めに売却して、燃費の高い最新の中型機の割合を高めている。通常の6〜7割まで乗客は戻ってきているという話もあるが、つなぎの融資は受けられているものの、固定費は半端なく大きい両社は、この状況が今年末も続けば、もっと経営はより厳しくなる。

 東京五輪の開催は無観客で空振り、go toキャンペーンもコロナ感染拡大とのいたちごっこで、需要が伸びていない。当初の見込み通りの乗客数を今年に期待をするのは難しい状況だ。LCC航空企業共々、五輪特需の消失を経てもなお、日本の空の需要と供給はまだ数年間は縮小均衡せざるを得ない状況であろう。これは髙松空港に乗り入れていて現在、運休中の国際線キャリアも全く同じであり、髙松空港の民営化による投資計画の見通し修正も予断を許さない。

タイトルとURLをコピーしました