高松市の鬼無地区から国分寺地区にかけては、全国約80%のシェアを誇る松盆栽の一大産地。
㈱妙興は当地で盆栽を仕入れ、ECサイトで販売を行うほか、盆栽情報発信サイトの運営などを通じて「和」の景観と文化を世の中に伝えている。
辻本さんは昨年9月、社長のバトンを高村雅子氏に渡し、会長職に就いた。「弊社は私以外、全員女性スタッフ。盆栽業界は高齢の男性が中心だが、女性リーダーが活躍することで流れを変えたい」と、新風を吹かせる。
2008年、㈱妙興の前身となるWEB制作会社を高村氏と起業。仕事を通して、盆栽産業が縮小の一途をたどっていることを知った。「日本が誇る伝統文化の火を消してはいけない」という強い思いから、ECサイト「盆栽妙」を立ち上げたのが09年のこと。盆栽ビギナーに向けた分かりやすい情報発信、女性スタッフの視点をいかした商品開発を積み重ねてきた。
これまでの努力が実を結び、昨年は「かがわ成長する企業大賞」の奨励賞を受賞、Amazon Japanによる全国テレビCMに抜擢された。盆栽に癒やしを求める巣ごもり需要が追い風となり、業績も好調だ。
現在、古民家を再生した複合施設の整備を進めている。国分寺町にある4000㎡の農地が、盆栽の観光農園をはじめ、カフェ、店舗、民泊に生まれ変わる。開業は今年度末を予定。
さらには、次世代の盆栽職人を育成する計画もある。同社が若手の職人を雇用し、販売ルートも支援していくという。
これからの抱負を訊くと「多くの方に、もっと広く深く盆栽を知ってもらえるよう、職人や地元の想いをこつこつと伝えていくだけ」と謙虚に述べ、優しく微笑んだ。
※「かがわ経済レポート」2022年特別号「寅年の経営者」より編集してお届けしました。