県内の新規感染者数は100名を下回る日々が続き、感染症第6波は収束の兆しが差したかに見える。一方で、未だ外出・外食を控える層は一定数残り、国際情勢の悪化によって原材料価格はかつてない価格へと高騰。飲食店をはじめとする食品関係者へのダメージは計り知れない。
フランス国家シュヴァリエの勲章を授与された木場巳雄シェフのフランス料理店「ボワ・エ・デュポン」(高松市松福町2-12-7)もまた、店舗の在り方に葛藤した飲食店のひとつだ。
弁当の販売、HP・オンラインショップの開設、お取り寄せブランドの立ち上げ、「どれもコロナ禍にならなければ、絶対にやらなかったこと」と木場シェフの妻の邦江さんは振り返る。
今年4月にスタートを切ったセカンドブランド「et et et(エトロワ)」は、フレンチの真髄を味わうボワ・エ・デュポンとは一線を画した、家庭でカジュアルに味わうフレンチがコンセプト。2人前のセットを中心に、約20種類の商品を取り扱う。
ブランド名の「et」はフランス語で「and」を意味し、料理によって伝統と未来、作り手と客、人と人との絆をつなぐという想いを込めた。香川のオリーブを想起させる淡いグリーンを背景に、「お盆に乗せてサーブする」イラストを描いたロゴデザインも印象的だ。
現在、ブランド内で高い人気を誇るのは「地元食材にこだわったイチオシセット SANUKIセットA」(2人前10500円)。讃岐オリーブ地鶏を使用したコッコーヴァン、オリーブ牛100%特製ハンバーグステーキ、旬のポタージュの3品がセットになっている。
店の看板商品、国産牛ホホ肉の赤ワイン煮込みが入った「人気メニューのシンプルセット SANUKIセットB」(2人前8000円)も贈答用として人気が高い。
基本メニューと言える「シェフ木場のコンソメスープ」(2人前2000円)や、気軽に楽しめる「お試しセット」(1人前4500円〜)も見逃せない商品だ。
「注文の7割は東京や大阪を中心とする県外から。店には来たことがない方ばかり」と邦江さんは言う。丁寧な仕事にこだわり、発送作業は常にダブルチェック。商品には邦江さんが一筆一筆、手書きの手紙を添えている。
「うちの店を全く知らなかった方が、探し当ててくれたことが嬉しい。だからこそ、感謝を伝えたい」。そう言って目尻を下げながらも、まなざしは彼方を向いていた。
「既にレストランだけでやっていくのは難しい時代に入っている。それはどこも同じ。飲食店が生き残れるかどうかは、いかに柔軟に世の中に合わせられるかにかかっている。
エトロワというブランドで、その時々のお客様の要望に応えながら、フレンチという枠ではできなかったことにも自由に挑戦していきたい。見えない将来に向かってやっていくなかで、きっと未来が見えてくると思っている」。
困難な時代にあっても、名店はまっすぐに未来を見つめ、進んでいる。
エトロワのオンラインショップは下記ページから。