香川県の基幹病院である香川県立中央病院。朝日町への移転は成功か?
香川県の地域医療の基幹病院「香川県立中央病院」が長年位置していた高松市の中心部、番町から一転して埋立地である朝日町に移転新築して7年が経過した。この一大プロジェクトは、サンポートや林町サンメッセ隣接地などの様々なシュミレーションを行った結果、高松市朝日新町の廃止された旧日本たばこ産業高松工場跡地が選択された。当時は平成16年に起こった「高松水害」で一面水面下に沈んでしまったような敷地を、わざわざ選ばなくてもいいのではという意見が強かったものだ。
阪神大震災当時、神戸株式会社と揶揄された神戸市が丘陵地の削った土砂をコンベアで海まで運んで、埋め立てて造ったのポートアイランド。そこに立地する神戸市の基幹病院である中央病院は、建物自体はあまり損傷はなかったものの、水や電気、はたまた周辺道路をはじめとするライフラインが完全遮断され、患者はもとより島外に住む病院関係者も病院までたどり着けずに、病院機能は完全に麻痺した状況が何日も続いたそうである。壊滅的な被害を受けた大震災で機能をしなかったのだ。
現在の神戸市立新中央市民病院
特にネックとなったのが、神戸市街地とポートアイランドとの当時唯一結ぶ交通手段である「神戸大橋」に損傷があったので、一気に陸の孤島と化するという脆弱な場所。そこに市民の基幹病院を作ったことでそもそもの間違いがあったとも言える。その後、神戸市ではこの病院を新たに造成したポートアイランド二期工事地へ移転新築させた。当然更に市街地からは遠ざかることになり、いざと言うときのアクセスの脆弱さも、橋のほかに海底トンネルが出来ているとはいえあまり変わらない感じである。
JT高松工場跡地の周辺は、ひとたび大雨が降れば道路の水没は日常茶飯事。また大地震の際に問題になる地盤の液状化現象の危険性もある。目の前に桟橋でも造れば陸上の道路が寸断されても、島しょ部以外に県の東や西から船で船で患者を輸送することは出来るかもしれないが、あとは防災ヘリコプターや自衛隊などの輸送トラック頼みとなる“陸の孤島”に思えた。
香川県立中央病院
通院や見舞い客などの足の面では、現在、マイカーや送迎車以外では路線のことでんバスとタクシーが主。新たな核となる施設が出来たことで、周辺にある県立の体育館や武道館、競輪場や刑務所といった既存施設を大胆に移転整備して街の骨格を変えていけるのではとの期待も当時は持ったが、そのどれもが全く動いていない。大病院が移転してきたのだから将来的にでも周辺環境の再整備、地域の性格付けを考え直して、例えば新たな高松市の健康タウンづくりを目指すなどの施設配置ビジョンを構築した上で、中央病院の周辺まちづくり整備に継続して進めていってもらいたいものである。
番町の旧中央病院跡地はNHK高松放送局の移転建替え候補地にして欲しい!
さて高松市番町の旧中央病院跡地についてであるが、いったい現在はどうなっているのか。旧高商跡地でもあり敷地が四方向ともに完全には独立しておらず、住宅に近接し敷地の一部を出っ張るように住宅等が建つ変形した形状のため周辺環境に配慮をせざるを得ない。
ではこの敷地を使っていく何をしていくのかは、高松市の将来計画に大きく影響する高松のへそ。希望は高松市に不足する高等教育機関、新大学の設置なのだがそれが難しければ、香川大学のキャンパスの一部にして新学部の設置。あと差し迫って解決をせねばならない問題として上げられるのが、「NHK高松放送局の移転新築」である。現在の場所よりもより街の中心部にあたるため、まちの顔としてのシンボル性や敷地の広さから機能性は失われずに済む。周辺環境にもマッチ。
すでに高松放送局は昭和37年の新築なので60年近く経過して老朽化が大変進んでいる。その間にも他県のNHK地方局が続々と局舎の新築を済ませている。最近新築が完了した放送局で見ると、札幌が約24000㎡、奈良で約4500㎡、大津で約4400㎡、佐賀が約5200㎡、鹿児島が約6000㎡などで約6000㎡で地上3〜5階建てが地方放送会館の平均的な広さのようだ。中でもNHK松江放送局は旧松江市立病院跡地を購入して、約5200㎡の局舎を建設するのでここがひとつ新高松局移転スキームのモデルになるのではないか。
放送局は放送を継続しなければならないため、同所での建て替えが難しくNHKは新たに敷地を確保して建設するケースが多い。またどの移転先もそのまちの核になるような超一等地に広い敷地を確保している。そこに造形も象徴的な放送会館を建設、中継車などの資材を保管する車庫等の広さも十分獲れる環境だ。約15000㎡の広さがある県立中央病院跡地は条件にマッチしていると思う。ここは次の利用計画が固まる前に早期の移転契約を期待したい。
現在は更地化されている旧香川県立中央病院