日本ってそもそも富裕層はいったいどこにいるの? 《かがわコラム》

▼東京に住んでいると様々な富裕層向けの施設やサービスが乱立していることに、改めて気付かされる。確かにクルマを走らせると青山や六本木近辺は、高級外車ばかりが道路を走っていて、ロードサイドにはそうした輸入車を販売するきらびやかな自動車ディーラーが軒を連ねている。ほんの一例だ。

本当に日本は発展途上国の仲間入りをこれからしていくの?というメディアの少し恐怖心を煽るような記事がにわかに信じられない。しかし一転、地方に目を向けると更新されない市街地と軽自動車ばかりが走る道路。百貨店はあっても一店舗でイオンに行くのがハレの場となっている。高級住宅地など見当たらない。そんな風景が当たり前である。もちろんその中で幸せな生活を営むことは誰もが出来るのかもしれないが、それなら地方のお金を持っている方は東京にしかいないの?

という問いには、確かに地方のお金持ちには東京の別宅を持つことは人気であるということは言えそうだ。それだけ富裕層を満足させる商品やサービスが東京ならば簡単に見つけることができる。地方なら目立つが東京なら沢山の人が暮らしているから、少々お金があっても誰も気にしない。

雇用環境の悪化にともない、個人消費の落ち込みは想像を絶するスピードで進行した。その上でのコロナ禍の襲来で、小売業や飲食業は特に高単価の業態から撤退の嵐に陥った。東京銀座のブランド街などでもその影響は計り知れず、出店や改装を取りやめたり、百貨店企業も更なるリストラを迫られる状況に陥っている。

つい数年前くらいには所得の二極化が叫ばれ、新・富裕層と呼ばれる人たちへの消費拡大への期待に伴って、新たなビジネス参入やそういった層に向けた新たなサービスが脚光を浴びていたはずなのだが、果たして何処へ行ったの?

▼銀座はいつの時代も、そうした富裕層向けの新たな展開を考えるブランドショップが試験的に店舗をオープンさせる。数年前、「ヴァーチュ〈Vertu〉」という名前の聞き慣れないブランドショップがオープンした。その中身は世界最大の携帯電話機のメーカーであるフィンランドの「ノキア」が世界各国で展開している富裕層向けの高級携帯電話のブランドであった。

携帯電話一台が数百万円するという飛んでもない店だが、一台づつ職人が手作りで宝石や革を使って丹念に仕上げた、ゴージャスでかっこいい携帯電話ができあがる。この携帯を持つことはすでに世界中の金持ちの間では一つの常識となっている。

特徴はシリーズのどの機種にも必ず付いている「コンシェルジュボタン」だ。この携帯さえもっていれば、このボタンを押すだけで、あらゆるサービスを受けることが出来るようになっているという。まさに自分のわがままをその場にいながらかなえてくれる夢のような電話である。もちろん難題な要望に掛かる費用も莫大であろうが、それをかなえられるだけの手厚いサービス網があればこそ、この電話は売れていくのだろう。ちなみに世界標準とも目される「ノキア社」は、日本での一般向け携帯電話端末からは撤退しており、この富裕層ビジネス一本に掛けるようだ。

▼続いて東京駅上とも言える八重洲口側に建設中のビル内に「シャングリ・ラホテル東京」がオープン。一連の東京への外資系ホテル出店ラッシュのトリを務めるアジアを代表する超高級ホテルである。

果たしてこの二件の出来事は日本の世の中はどう捉えるか。そしてどれだけの利用があるのか。大手銀行などが進めるプライベートバンクサービスなど、ようやく日本にも富裕層向けのサービスが定着をしつつある中で、不況の最中でもこうしたところを利用する“真の富裕層”をどれだけ取り込んでいけるか。サプライズを好む層へ食い込む知恵と、細かなサポート体制によるほどよい密着感が鍵となる

▼もはや地方では富裕層向けのサービスは単独では成り立たない。地方と都会のマーケティングの棲み分けが今後は更に進む。そんな感覚を受ける出来事である。その後も日本への富裕層向けサービスの上陸は相次いでいる。日本発のサービスがなかなか出てこないところが、日本の今の姿を端的に表しているようだ。

すでに北海道のニセコは国際観光エリアとなってきている。そういった場所で真の金持ち向けサービスの真髄を一端として勉強すれば、日本の地方でも活かせる要素は見えてくるのではないか。すでにそういう段階に差し掛かっているのかもしれない。瀬戸内海は磨けば光る宝の山となる。

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