日本を支えてきた自動車産業だが、この先のゆく末は心配になる    《かがわコラム》

トヨタ自動車は2022年3月の連結決算の売上高は約31兆円、営業利益は約3兆円と前年より大きく伸ばしている。販売台数を見てみると約823万台だが日本は世界で唯一販売台数が約9.5%減って94万5千台となった。逆に海外は14.2%増の630万台。

 “日本という国を強くするためのお役に立てるよう「日本自動車株式会社」が世界をリードすべくホームプラネットへの思いを持ってやっていく”と決意表明をして、フロントランナーとしての自動車業界を結束を訴えるトヨタ自動車の豊田章男氏。

いつの間にかアジアの主戦場は中国一極集中

すでに欧米の主要メーカーは日本ではなく中国のモーターショーへの出展を優先しはじめていて、日本のモーターショーへは出展自体を取りやめてしまうという、にわかに信じられない出来事が起こっている。

これではいくらクルマ好きの日本人とは言え、輸入車への魅力感が薄まってしまう。世界各国の自動車メディアも主戦場となっている中国での取材を優先することになるので、必然的に東京発信の自動車関連のニュースが激減するジレンマに陥ってしまっている。

 最近では有名な日本メーカーのモデルであっても、グルーバルなモデルを中心に、あえて欧米のショーで先にモデルチェンジを発表してしまい、日本のショーでのお披露目はあくまで日本モデルを日本人ユーザーに向けて発表するに留めるものになっている。

欧米やアジア向け専売車種の増加も顕著だ。日本市場をまるで軽視しているのかのような扱いであることも日本ユーザーを逆なでしている。それがついに日本メーカーにまで日本よりも海外のモデル開発の力の入れ具合から伝わってくる。

日本国内で輸入車を販売する公認販売ディーラーは、日本のモーターショーへの出展を取りやめた本国サイドの対応をどう感じているのだろうか。もちろんモーターショーは販売モデルを多くの来場者に見て触って体感してもらうことで、商談に結び付ける要素が大きくある。その上、コンセプトモデルを発表して自社ブランドのアイデンティティを発露する場のはずである。

ショーの出展自体がないとなると、日本では発売をしていないのではと勘違いしかねない。詳しくはホームページをショールーム代わりに見て下さい。としか言えない苦悩、大都市圏しかショールーム展開のない輸入車メーカーが多くなっているので、そうした対応しか出来ないのだ。果たして本当に日本市場に売る気があるのか?と疑いたくなる。

しかし2021年1月から12月に日本で販売された輸入車台数や約26万台と前年よりも1・7%増えた。モーターショーへ出展はしなくても日本の販売は減らしていないことになる。なんでこんなことに。

日本の自動車市場に未来は描けなくなったのか?

 約500万台規模と言われる日本市場だが、中国をはじめ東南アジアの伸びしろだったり、増加を続ける富裕層に至っては日本では考えられない大金持ちが存在し、それに呼応した超高級車ニーズがたいへん大きいことが影響をしてのことだろう。

クルマは単純な移動手段だといわれればその通り。“モビリティ”というワードで表現する傾向もある。また若者の車離れはこれからも進む。一方ではクルマなしでは生活に困る地方やシニア世代といった別の色分けも残る。日本の自動車販売現場が大きく様変わりをしているのは間違いないだろう。日常の足として使うために購入する層と、いわば貴金属を買うようにステイタスとして高級車を購入する層。

中でもスーパーカーと呼ばれる超高級車はこのコロナ禍で逆に売上を増やしてきているのだ。

未だに大型のピックアップトラックが主戦場の米国市場のように、国によって趣味や指向も変わるので、そこに向けた専用モデルも必要になる。一方の日本では更に軽自動車のシェアが伸びていって日頃の足ならこれで十分とされる。

自動運転車がこの先、すぐに取って替わるとはどうしても思えない。そうなってくると、それまでの間、免許取得歴のない若者が増えて来るかもしれない。また免許は取っても自分の車は買わずに、カーシェアやレンタカーで必要に応じて済ます層がこれからは増えて来ることは間違いない。

日本の経済を引っ張ってきた自動車産業はすでに日本の未来を担う唯一の希望へと

他方、2000年代に入って日本の電気産業の統廃合や縮小で、いつのまにか家電IT産業は世界市場の中で急速に存在感が萎んでしまった。自動車産業はトヨタ自動車の好決算があることから、一見すると好対照の2つであると認識をしてしまう。だが、トラック業界は日野自動車の一件もあり、危機的な状況。軽自動車はEV化への課題がある。このまま自動車産業が今の地位を維持出来るのか。安全で快適な次世代カーの創造は日本の自動車産業にとっては生き残りを図る道。

トヨタが好景気の今が、後から振り返ると一番勢いがあったと言われないようしっかりと業界を牽引してもらいたいものである。すでに他メーカーは何らかの海外等の別資本が入ってきているところが多いので、思惑が異なり自社だけでの舵取りは難しい状況なのである。

一方、新エネルギー車では世界一の販売数となった中国のBYD(比亜迪)などもバスで仕掛けた日本のEV市場に新たに乗用車を登場させる。日本の10倍のメーカー数があることから、生き残りを賭けて新技術の導入にも熱心な中国メーカーの動向に、欧米メーカーも注視せざるを得ない状況と言える。そして欧米でもこの分野へのベンチャー企業の進出は盛んで、次々と第2のテスラが生まれる要素がある。

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