“移住者が目指す場所になりたい”🌉 《かがわコラム》

 高松市男木島は迷路の島。山肌に集落が張り付き、独特の景観を作っている。高松市でありながら忘れ去られていたような瀬戸内の小島が瀬戸芸の開催を契機にして、大勢の島外からの来訪者が押し寄せるようになったのである。

一度訪れ上陸するだけで、その魅力に魅せられてしまう雰囲気のある島である。今では芸術祭の開催年ではなくても常時観光客が訪れる島になった。地元からするとこれはすごいことである。実際に島を訪れるたびに、自然と素朴な島民の生活に興味が沸くようになるのだろう。高松市からフェリーで一時間以内で付くことが出来る離島だ。

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2回目の回の瀬戸芸以降の数年で、移住者が増え始めたことで、小中学校が復活した。これがまた呼び水ともなったようで、わずか1年で約三十人もの新住民が新たに生活をスタートさせたという。これは当時の島民の一割にも及ぶ。都会で三十人はわずかでもこの島では一大ムーブとなるのはおわかりだろう。

そんなうちのひとりの女性が始めたのが「男木島図書館プロジェクト」。本好きの彼女は手押しの乳母車(オンバ)で、週一回の移動図書館を島内で始めた。それを利用する島民の声から、図書館の開設を思いつく。島民と観光客を繋いでいきたいという思いの実現が出来るのではないかとも。
そこでネット上のクラウドファンディングサイトを通じて全国に発信したところ、約二百万円を超える寄付が集まりその資金を元手に、手作りで改修する古民家に本棚とそこに置く本を買い揃えた。

今、全国的に個人書店、大手チェーンを含めての廃業が増えている。町で唯一の文化の拠点をなくした地域では、最後の砦が図書館のみという地域が急速に拡大しているのが気になっている。

人口が多い街では個人で「まちライブラリー」と呼ばれる私設図書館ネットワークが出来つつある。本当なら行政にも手が届かないような過疎地にこそ、図書館の存在が必要と訴えそれが支援の輪が広がったきっかけになった。

学校にはないような本も置いてあれば、子どもから大人までが集い、活字に親しむことが出来る。目が遠くなったお年寄りのための補助器具もある。カフェメニューを置いて、収入の足しにする。

都会で暮らしていた島外からの移住者は、田舎に行くと都会では当たり前に享受することが出来たこうした文化的な営みが、全く持って難しいことに気づくのに時間は掛からない。

しかしそれぞれが持つ様々な課題を解決することを目的に考える熱量やスキルを、そのままローカルに持ち込むことで、変化を好まない島内コミュニティに新たな刺激を生んでいる。

移住人気が高い瀬戸内沿岸

2011年の大震災発生以降、最大の人口過密地帯である首都圏では、何かと心配の種が尽きない窮屈な生活を強いられるようになった。それを逃れて、地方移住する人は確実に増えた時期がある。

当時は家族連れに人気の岡山県香川県が一躍注目を集めた。原発からの距離が離れている環境の良さだけではない、教育・医療などの文化的な人間生活に必要な住みやすさを兼ね備えていることも評価が高まった理由だ。

移住先を決めるきっかけは思いの外、自然体。ただなんとなくイメージが良かったとか、行ってみたら良かった、すでに多くの人が移住しているからとか、少しの差が決め手となっており、その蓄積が将来大きな差になってくる。ただ移住者は行った先が気に入らないと直ぐ他へ転居するのも早いのが難点。

今回のコロナ禍も都会から田舎への移住指向の高まりがメディアでも報道されている。

でも実際には当初は、一時的な自主避難先として家族だけを“一時避難”していただけというケースも多い。実際に住んでみて子ども達から地元住民にすんなり溶け込めたなどの印象が加わり、そのまま本格移住したという先輩家族の口コミがまた次の家族を呼んでくるという好循環が起き始める。

お隣の徳島県なども同様に限界集落となっている過疎の村に、続々と手に職を持つ家族が引っ越してきて、村に新たな店舗や仕事を生み出しているという話題が報道されている。

今や個人で少し発信力の高い人がその様子をブログやSNSなどでリアルタイムに発信すれば、すぐに多くの読者がつき関心を持ってもらえる。もちろん地元の各自治体の予算を付けて誘致に掛ける力の入れ方もハンパない。硬軟織り交ぜての様々な支援策が充実してきているようだ。ブームから定着へ。リモートワーク先探しはそろそろ着地点を探す時期だ。

【まとめ】若い人にもっと香川の魅力を知ってもらう努力を

 香川県もそうした地方間の競争を勝ち抜くため。もっと工夫をした移住促進に向けた取組に本腰を入れてもらいたい。何より、高校・専門・大学卒業とともに9割以上が県外へ進学・就職をしてしまう若者達への対応だ。

単なる地方の風物詩で終わらせるのではなく、積極的に地元に残ってもらうためにあらゆる知恵を授けて欲しい。田舎にこそ日本の未来があると言っても過言ではない。生まれ育ったところで生涯暮らして、社会に貢献することを夢に持つ学生を増やす。

せめて都会の大学を卒業したら、必ず香川に戻って来られるような支援策のプラン作りも厚くして欲しい。日本の戦後の高度成長も、戦後すぐに起きたベビーブームから始まっている。人口減少地域に明るい未来は訪れないのは歴史が証明している。幾らITが発達して、どこに暮らしていようと故郷とは繫がっていることは出来てもだ。

瀬戸内の島が示すのは四国の未来の姿なのであった。瀬戸芸がそれを証明してくれたということ。

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