長崎市が今、最も注目すべき地方都市と言える訳⛴   《かがわコラム》

高松市が「瀬戸の都」なら、長崎市はさしずめなんと呼んでいるのだろう。歴史の教科書には幾度も登場するので「人類最後の原爆被害から立ち直り、いまや新幹線開通も間近な南蛮渡来以来の貿易港」とでも呼んでおこう。

観光名所として有名な稲佐山から見る風景や夜景がお薦めしたい。さしずめ“宝石箱をちりばめたような”美しさは「世界新三大夜景」のひとつとも言われるほどで訪れた人々を魅了する。入り組んだ湾内に向かって市街地がすり鉢状に広がる光景は、まるでミニチュア都市を見るかのような映える景色だ。

三菱重工長崎造船所で造られる建造船の巨大な姿が港を占める風景

もさることながら、その脇に建つ重工の長崎事務所ビルも戦艦のような巨大さだ。そしてコロナ禍前なら日本で2番目の入港数を誇る世界トップクラスの大型クルーズ客船の大きさが、街の大きさと対比されさしずめ、日本の西の玄関口に相応しいたたずまいとなっている。

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人口は高松市とそれほど変わらない規模だが、高松市のように平野に果てしなく広がる風景とは全く異なり、変化に富んだものでコンパクトながら山肌をびっしりと取り囲む住宅の数には圧倒される。

それは逆に観光地といえども、ほぼもれなく生活をする上では坂や階段がつきもので、自転車が普及しない替わりに原付バイクがやたら多いのもうなづける。そして数少ない平地は路面電車が端と端を結び、山を縫うように走る狭い道路には路線バスが縦横無尽に走っているので、案外と不便さは感じない。業務商業エリアの市街地と住宅地がしっかりと棲み分けられている。

長崎市の位置は半島内にあるため、九州各地はじめ県内各所との移動は必ずその根元を通る必要がある。さしずめここがネックとなりまるで関所の役目を果たしているのだ。陸の交通機関は道路も鉄道もこの狭いエリアに集中しているのだが、今ここに新たに新幹線の高架橋が加わろうとしている。

長崎駅周辺が今すごいことになっているよ

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こうした地形と三菱の城下町であったことが、第2次世界大戦終結を急ぐ米国が原子爆弾の標的に長崎を選んだ一つの理由ともなったのは有名な話である。

周囲を山に囲まれながらも、その山には頂上の近くまで家やホテル等が張り付くため、特に夕景や夜景はとても綺麗に見える。ロープーウェイで昇る市内の稲佐山中腹にある展望台からの夜景は「新世界三大夜景」のひとつと呼ばれるのが頷けるほど、これは本当に素晴らしい。

このほどユネスコの世界遺産として新たに認定を受けたのが、国宝の「大浦天主堂」をはじめとする「長崎・天草のキリスト教関連遺産。他にも市内にはグラバー邸、めがね橋、出島など歴史史跡が枚挙にいとまがない。

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そんな場所を訪れた後に空腹を満たすのに観光客達はこぞって中華街の銘店を目指す。ここの中華街は神戸や横浜とも違う趣向の店が揃っていてどこで食事をするかが楽しい。

新幹線が運んでくる地域の未来

江戸時代からの通商の歴史や開国後の変化、被爆とそこからの復興、現在の観光地としてのそれぞれの魅力や興味の分野がバランス良い。

いよいよ2022年には長崎新幹線が武雄温泉から長崎の区間に暫定開通を予定している。すでに新長崎駅は開業していて、受入も整いつつある。佐賀県の反対にあい在来線区間が残ったままの切り札となるべく、開発を急いだ肝心のフリーゲージトレインは暗礁に乗り上げた。果たしてこの先、打開策はあるのだろうか。盲腸線のまま残ってしまうと効果は半減以下だ。

北陸新幹線ブームに沸いた金沢市の夢よ再びと盛り上がっていた長崎市民も、また数々の難題に直面しつつも千載一遇、地域の発展に賭けている。県民の他県への人口流出が全国でもトップクラスとなっている長崎県。三菱の街としての企業城下町の繁栄も、今となっては他の有力企業が育って来なかったという弊害ばかりが目に付く。中小・中堅の伸び盛りの企業が揃っていないと、労働者の受入先がなくなり、福岡などの都会への流出に歯止めが効かなくなってしまう。新産業の育成は喫緊の課題である。そこへ名乗り出たのが佐世保市が発祥の通販企業ジャパネットホールディングスだ。

 都心にあった三菱重工長崎造船所の工場跡地約7ヘクタールは、開発案に選ばれた通販のジャパネットグループにより、複合型のサッカー専用スタジアムが建設される。自社のグループに組み入れたJリーグサッカーチームの「Vファーレン長崎」のホームグラウンドにする計画だ。スタジアムに組み込んで建設される高級ホテルの客室からは、試合経過が見られる贅沢な場所になる。

来年に着工し2024年のグランドオープンを目指している。長崎市ににぎわいが生まれそうだ。

JRと長崎市、長崎県は移転した新長崎駅と周辺開発で、街の骨格そのものを大胆に生まれ変えようと懸命だ。長崎駅周辺は新幹線の乗り入れに合わせて在来線ルートを変えて高架化と手前に新駅建設などを行っている。

新駅ビルには世界的ホテルチェーンのマリオットホテルが入る。ちょうど名古屋駅ビルにも入っている。そして駅前の大型のMICE施設にもヒルトンホテルが計画され、国際的二大チェーンホテルが長崎駅前にそろい踏みとなるのだ。すでに駅の海側の埋立地には新長崎県庁も移転し稼働を始めている他、長崎市役所の移転新築が検討されると街自体が大改造の真っ最中なのだ。ただ跡地開発の見通しが立たないなどの都市政策の行き詰まりも指摘されているので表裏一体とはいっていない。

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長崎には特徴的な祭りが多く、ランタンフェスをはじめ、くんちや精霊ながしといった伝統ある他にない魅力がふんだんにある。

 

島ブームと世界遺産認定で現在では、五島列島なども大注目を浴びている。

文化・観光交流都市」として成功した金沢市と高松市の交流をぜひ今度は長崎市とも協定を結び、両都市間の盛り上げに一役買えないだろうか。同じ港町でもあり、今後、新幹線や空路を通じた交流人口を拡大のきっかけづくりになろう。

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香川県ではここまでの投資はむずかしい、あくまで長崎新幹線バブルであり、新幹線開通後が勝負。しかし次の機会を狙っている四国新幹線の誘致を掲げる香川の政財界としても、新幹線誘致の先輩として、また沈む三菱村を産業構造の変革を行って行く姿や観光都市として一日の長がある「長崎」という先輩都市には学ぶべき点もまた多いのではないだろうか。

最後に“香川のジャパネットは現れないだろうか”?

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