四国新幹線は彼方に! すでに貴重な存在の夜汽車が走る郷。東京を発つと寝ている間に四国に着いている便利な電車がある。 《かがわコラム》

 

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 北海道に新幹線の恩恵はあまり来なかった

北海道新幹線。北海道民にとってはまさに悲願の“新幹線上陸”であっただろう。しかしその代償も大きかったことが今更ながら認識され始めている。 まず北海道旅行の代名詞ともなっていた「カシオペア」や「トワイライトエクスプレス」に代表される、長距離豪華寝台特急列車が相次いで廃止された。ゆったりと旅を楽しむことが出来る良き時代との別れ。

ならば高質な観光列車で話題の「ななつ星in九州」「TRAIN SUITE 四季島」「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」があるではないかと言われるかもしれない。しかしこのどれもが周遊型の臨時寝台列車であり、定期列車とは異なるいわば観光企画商品向け貸切列車なのだ。

これまで東京と北海道を結ぶ直通列車はブルートレインのみであったのだが、廃止となったことでおのずとその役割は北海道新幹線に移行したはずであった。かつて多くのネーミングの寝台列車が東海道や山陽方面のブルートレインとして運行されていたのだが、廃止されてしまった今、日本の夜行列車は消えたのではと思われた。

首都圏とパワースポット出雲大社・金比羅宮を結ぶ

“夜汽車”という哀愁を帯びたネーミングも過去のモノとなってしまったのか?いや一つだけ残っている夜行列車があった。正しくは夜行電車特急なのだが。首都圏と高松・出雲を結ぶ「サンライズ瀬戸・出雲」なのだ この電車車両はまだデビューして20数年程度なので、まだ新しく感じられ現代的なデザインの外観及び内観を持つのが特徴的だ。

当然、東海道・山陽本線唯一の定期旅客寝台特急であるばかりか、「北斗星」が臨時列車に降格して以降は、日本全国のJRで唯一の“夜行列車”。走行距離もJRの在来線の定期旅客列車では最長区間を走るまさにキングオブ“夜汽車”なのである。

 途中の岡山駅では切り離し作業が見られる。高松方面の瀬戸大橋線と米子方面の伯備線に車輌が途中で切り放され、その逆は山陰と四国からやってきた車輌が岡山駅で併結されるというのも、他の夜行列車にはあまりなかった運用方法である。画像1

いやこれこそ自ら動力を持つ電車ならではの芸当である。日本唯一の夜行特急電車の存在価値 パワースポットとして、特に本殿遷座祭が行われた頃から女性にも大人気となった、出雲大社にもちなむ「サンライズ出雲」は、“パワースポット巡り”が大好きなを女性客の心をしっかり掴み、週末は予約が取りずらくなってしまったようだ。一躍人気列車の仲間入りか。

それに比べると、これまで少々影が薄かった「サンライズ瀬戸」。しかし瀬戸内国際芸術祭開催以降の女性人気の上昇で“出雲を選ぶか瀬戸を選ぶか”悩ましい状況となっているようだ。また期間限定で「サンライズ琴平」として、琴平駅まで延長運転を始めたことで、琴平=こんぴらさん=こんぴらゴールドプロジェクトもスタート。金運あらたかなパワースポットであることをアピールし、「出雲大社」に負けないパワースポットの存在感を創り出すことに成功した。

日本唯一の夜行電車特急の存在は大きい

 

さすがサンライズ車両は新しい設計だけに、カラーやインテリアなど、ホテルを思わせる温かみのある内装は女性向き。しかも「ノビノビ座席」はフルフラットで、ちょうどフェリーの客室のような絨毯が敷いてあり、寝台料金が不要というカジュアルさも時代にもマッチしている。世の中は豪華夜行バスが全盛の時代ではあるものの、このスペースの広さ、よこになって行ける贅沢な空間には遠く及ばないのは事実である。

「サンライズ瀬戸」。この列車に乗車さえすれば、あとはサロンでゆっくりお酒でも飲みながら静かに会話をしてしばしくつろぐ。電車の音がこれから向かう場所への想いを馳せながら旅情を駆り立てる。そしてしっかりカラダを伸ばしてゆっくり休養し、起きたらそこはもう現地着なのだ。乗った瞬間「非日常を味わえる場所」

 一日一本、七両編成の列車には、豊かなロマンとゆめが詰まっている。こうした物語性の高いコンテンツをもっと活かせば、例えこの電車を実際に利用しなくても、いつかはあこがれの四国、讃岐へという密かな欲求を都会の人に植え付けることが出来るであろう。 日本で唯一の夜行列車が結ぶ世界は、それほど魅力的な旅先となる。ぜひ次回の瀬戸芸には、香川の新たな魅力をこれまでにない切り口を訴求する必要がある。今でも関東の人にとって、遙かかなたの“碧い国四国”なのである。お遍路文化などは神秘的でどこかミステリーな香りのする神秘の国。飛行機なら1時間少々の距離ではあっても、精神的な距離はまだ遙かにある。そこをうまく活かしていくことも重要な戦略だ。
サンライズ号はまさに瀬戸内の夜明けだ。

 

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