大廃業時代の日本、そして地方企業を救う秘策とは📖 《かがわコラム》

山口銀行やもみじ銀行などを傘下におく山口フィナンシャルグループは、経営者を志す若者に投資し、後継者がいない地場企業の事業承継を、つなげる活動を続けている。

すでに米国ではこの仕組みを「サーチファンド」と呼び、大分前から普及しているものだが、国内ではどうも同社が初めての取組みという。

サーチファンドを活かした若者たちの独立を支援

 

 これは1984年に米国で誕生した投資のモデルのひとつで、アイビーリーグ等のMBAを卒業した30代前後の青年達が、まず個人投資家から資金を集め、社長となりたい中小企業を探し出してその企業を買収する。

日本の中小企業ではこれまで身内による事業承継、社内からの登用などで、世代交代を図ってきたものの、ここにきてそれが急速に機能しなくなってきている。

数年前にある新書が発売され、会社員に注目された。「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい〜人生100年時代の個人M&A入門」という本だ。起業して一から自分の会社やお店を持つのはリスクが大きいが、M&A市場に出て来た後継者難の優良企業を時間と手間を買う様に手に入れてしまうという選択肢。

 会社員が自分で会社を買い、それまでの仕事経験を生かして、販路開拓など経営者として辣腕を奮うことで、企業価値を上げることができれば、またその企業を別の経営者に買った時より高値で売却も可能という話。

大手企業でマネジメント経験があって、退職金もしっかりもらえる様な方にとっては、自分が培ってきた力を発揮する場所として、第2の人生をチャレンジする場として退職金を元手にしての投資対象の一つにになりうると思う。

実際、都会ではこうしたセミナーが活発に開催され、買収候補の視察ツアーなども組み込まれている。

後継者がいない企業では、働く従業員のために是非とも誰かに継いで欲しい、まずは従業員の生活を守りたいと考えている経営者も多く居るのは事実なので、こうした動きがあるのは心強い。

 『大廃業時代』の令和時代

は、独立するラストチャンスでもあるというのだ。果たしてそんな事が簡単にできるのだろうか。

 現在、ネット上にはそうした仲介サービスが現れており、スマホ片手に家庭でも気軽に購入案件を調べることが出来、気に入れば手続きをして現地調査を経て検討へと進む。

今の話は主にリタイア後の人生設計の中にそうしたプランもあるのでは、という話であるがその事業の基盤や将来性など、探せば見つかるかもしれない自分にフィットする投資先案件。

しかしネックは資金調達。そんな時に先ほどの山口FGの取組みの様な、まだ若い青年の伸びる力に賭けて、人間そのものに投資をするという投資環境の整備がなされると、チャレンジしたくなる人は増えてくるのではないだろうか。

いきなりぽっと出のサラリーマンが、肩書きを無くしてしまえば、社会的信用も一旦リセットされてしまう。M&A先はせっかくの技術や顧客基盤をみすみす失ってしまうのは確かにもったいないお話であろう。

働く人の気持ちを掴めるのか

これは現代日本の抱える喫緊の課題に救世主となるやもしれない。ぼやぼやしていても毎日のように、日本中で廃業が起きている。時間はあまりないのだ。

ある日突然、知らない人が会社に来て、これから私が社長として経営しますと言われたら、社員達は驚く。いったいこの人は何者で、会社をどうしようとしているのかと。

後継者がいなくて、このままなら会社を畳まなくてはいけなくなるかもしれない。このことを会社の社員が知っていれば、ああこの人が跡を継いで企業を存続してもらうと何となくわかる。

しかしそうした事情を良く知らないうちに、乗り込んでこられたら簡単に信用しろと言われても無理からぬ話である。

やはりこの部分が1番難しい。

幾ら安定した取引先がいて、従業員も揃っていても、それは前オーナーがコツコツと築きあげたもの。

幾ら資本家として経営に参画したからと言え、そこの業務は何もわからない。やはり実際に現場に立ち、従業員と腹を割って話しお互いのことを理解するまで時間は掛かる。

自分の考えを押しつけずに、これまでのやり方を尊重しつつ、もっと効率的にやっていくうまいやり方がある、もっとこの技術を生かした製品を開発したら売れるのではという地道な提案と率先垂範する姿勢がまず必要だろう。

 しかしギリギリになる前の早いタイミングでの事業承継は大事であり、香川の地でもこのサーチファンドがあっても良い。地方創生への一つの回答。ぜひ他の金融機関の取り組みもお願いしたい。

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