いまや日本のリゾートホテル展開の第一人者となった星野リゾートの星野社長が以前、テレビ番組内で「東京や大阪といった都心から、これからは地方に主戦場が移ってくるだろう。だから私たちも海外にうって出ていくんですよ。」と語っていたことを聞いた。
そしてすでに九州から北海道まで、そして海外にも多くの施設をオープンさせていて、これからも続々と出店計画が進んでいるというのだ。日本のリゾートもかなり国際化が進みすでにニセコなど国際的なリゾート地として認知され世界から多くの観光客を集めている。
いわずと知れた“おんせん県”の本場。温泉の湯煙が立ちのぼる景色が一望出来る山の上に巨大なホテル棟がオープンしている。
以前から別府市にはアジア、特に韓国から多くの観光客が訪れてきているといったニュースは洩れ伝え聞いていた。あまりに巨大すぎて少々持て余しぎみで、経営が傾き、北海道のホテルグループ入りした「杉の井ホテル」などはいまや、別府の勢いを象徴する稼働率の高さで潤っているようだ。隔世の感がある。
しかし日本型の観光ホテルタイプの和洋室スタイルではなく、純粋に西洋タイプのベッドタイプホテルがまだ少なく、“国際観光都市”とは少し名前倒れを感じていたところであった。
ではなぜ今、別府温泉なのか、そのひとつの答えが同じ別府市内にあるという。
それが「立命館アジアパシフィック(太平洋)大学」(APU)の存在。この大学。私立文系では九州トップクラスのレベルの高さを誇り、学生の約半分が世界、主にアジア地域から集まる優秀な留学生というのが特徴の大学だ。
大学の授業は日本語と英語の2カ国語でほとんど行われている。寮の学生は外国人と日本人がペアで一部屋を使う。
そのため自国の言語を含めて三カ国語は話せるトリリンガル学生が普通という。別府温泉内の各施設ではこうした学生が学校経由などでアルバイトに従事し、昨今のインバウンド対応の救世主となったようだ。別府にある様々な観光関連の施設に散らばってアルバイトをして、地域貢献を実現している。
インター社としては、この大学との提携を行うことで、優秀な学生の確保を期待すると同時に、大学側でも世界的なホテルチェーンからの有形無形のバックアップを期待する。
どの宿泊施設もこの大学の存在なくして、運営は成り立たないというのはあながち嘘ではない。開学して20年ですっかり地域の顔となっている様子がうかがえる。
地方において大学の誘致というのは確かに魅力的だが、ここまでうまく機能した例は他にはあまりないのではないか。すでに大分県は京都府に次いで、全国2番目に人口に占める留学生の数が多い県ともなっている。
卒業生の大半は日本企業に就職している事実も驚く点で、日本が追いかけるグルーバル化の最先端を担っていると言っても過言ではない大学である。
今回の一件を見ても、世界のグルーバル企業の誘致に一役買っていることにもなる訳で、この大学があってこその成果である。
今治市への加計学園の進出問題で地方への大学誘致がクローズアップされた。そこには大学誘致へ地元から多額の補助出費が出されていた。
APUでも総事業費の約3分の2は大分県と別府市が負担していて、決して安くはない先行投資であったのだが、こうして20年を経てしっかり果実が実を付けていt、収穫の時を迎えていることには決断に拍手を贈りたい。
石川県小松市に「公立小松大学」が開学した。地元にあった短大と専修学校を再編統合し公立化したものだが、新たに国際文化交流学部を設け、国際観光・地域創生コースで、地域を盛り上げる事の出来る人材養成に取り組む。
お隣の金沢市には「学都」と呼ぶに相応しい種類や規模の大学が立地しているのに、わざわざなんでとも思うのだが、地元で活躍する人材はぜひ地元で大事に育てていきたいという強烈なメッセージととらえることができる。
今後、北陸新幹線の延伸が進むと、単なる通過都市になってしまうという危機感も感じられる。小松駅前に誕生した再開発ビル内に大学キャンパスを設けていて、町中で共に学んでいける環境づくりが特徴だ。
大学進学時にほぼほぼ県外へ優秀な頭脳が流出する香川県。約8〜9割の高校生は県外へ出てしまい、地元の香川大学でさえ、学生の出身県で最も多い県は岡山県という有様だ。地元の大学は高校生の受け皿にさえなってない。
この問題について、県内では半ばタブー化している気配さえ感じる。こうした高等教育機関を地元でリスクを負ってでも整備をしていかなければと、問題にもっと真剣に取り組むべき声を挙げていく時期に来ている気がしてならない。地元で活躍する人材は自らが汗を流してでも育て育むという決意。
香川県からは多くが岡山県の大学に進学している。岡山市が大学や専門学校が増え続ける理由のひとつが、香川を含む四国からの進学者の受け皿になっているからとしたら皮肉なことではないだろうか。