猪熊弦一郎は20世紀に活躍した画家です。生涯現役で活動し、その画業は70年の長きに渡ります。一貫して絵画における「美」 を追求し、一方で常に新しい表現に挑戦することで画風が変化し続けました。戦前はパリ、戦後はニューヨーク、ハワイ と海外に拠点を置き国際的に活動しました。 本展では、戦後の猪熊の画業について、絵画以外の活動に注目します。1949年に猪熊が中心となって設立した「新制作派協会建築部」会員との協働、猪熊自身が手がけたデザインやパブリックアートの仕事、ニューヨーク滞在時に日米文化交流で果たした役割や世界的なアーティストとの交流、故郷の香川県に今の「アート県かがわ」につながる文化的な礎を築いたことなど、国内外に遺した足跡をたどります。
本展のポイント
1. 「新制作派協会建築部」の設立と建築家との協働、彫刻家イサム・ノグチとの出会いを紹介
2. 三越包装紙「華ひらく」やJR上野駅壁画《自由》など、生活空間に美を提供した活動を紹介
3. 20年に及ぶニューヨーク滞在中に、日米文化交流において果たした役割や、世界的なアーティストとの交流を紹介
4. 現在の「アート県かがわ」につながる、故郷の香川県における文化的所産(高松美術館、香川県庁舎(現 東館)など)を紹介
5. 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA、1991年開館、谷口吉生設計)を紹介
日米文化交流への公的貢献例
1956年 日本航空ニューヨーク支店の室内装飾を担当。(内装:吉村順三)
1957年 日米協会運営委員、ニューヨーク日本総領事館顧問(文化交流)、日米貿易振興会顧問 (文化交流係)を委嘱される。
1958年 高島屋ニューヨーク支店の壁画を担当。(設計:吉村順三)
1959年 ニューヨークのジャパン・ハウス・ギャラリー「魯山人展」のディスプレイを担当、アメリカ旅行中の棟方志功がポスターを描く。棟方自身もウィラード・ギャラリーで個展開催、猪熊夫人が展示を手伝っている。
京都市とボストン市の姉妹都市結成を記念し、裏千家がボストン博物館に贈った茶室のデザインと庭園のディスプレイをする。
1960年 日米親交100年祭のカタログをデザイン。
猪熊弦一郎(いのくまげんいちろう)
1902年 香川県高松市生まれ。少年時代を香川県で過ごす。
1921年 旧制丸亀中学校(現 香川県立丸亀高等学校)を卒業、上京し本郷洋画研究所で学ぶ。
1922年 東京美術学校(現 東京藝術大学)西洋画科に進学、藤島武二教室で学ぶ。
1926年 帝国美術院第7回美術展覧会に初入選する。以後、1934年まで毎年出品し入特選を重ねる。
1927年 東京美術学校を中退。
1935年 新帝展に反対し不出品の盟を結んだ有志と第二部会を組織、第1回展に出品する。
1936年 同世代の仲間と新制作派協会(現 新制作協会)を結成、以後発表の舞台とする。
1938年 渡仏、パリにアトリエを構える(~1940)。滞仏中アンリ・マティスに学ぶ 。
1950年 三越の包装紙「華ひらく」をデザインする。
1951年 国鉄上野駅(現 JR東日本上野駅)の大壁画《自由》を制作。
1955年 渡米、ニューヨークにアトリエを構える。
1975年 ニューヨークのアトリエを閉じ、東京に戻る。冬はハワイで制作するようになる。
1989年 丸亀市へ作品1,000点を寄贈。
1991年 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館が開館。
1993年 逝去、90歳。
開催概要
展覧会名:猪熊弦一郎博覧会
会期:2025年4月12日(土)-7月6日(日)
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日(5月5日は開館)、5月7日(水)
主催:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、公益財団法人ミモカ美術振興財団、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
建築史監修:五十嵐太郎(東北大学院教授)
アートディレクション:菊地敦己
観覧料
一般1,500円(団体割引1,200円、市民割900円)
大学生1,000円(団体割引800円、市民割600円)
高校生以下または18歳未満・丸亀市内に在住の65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
※同時開催常設展「猪熊弦一郎展 いのくまさん」観覧料を含みます。
※団体割引は20名以上の団体が対象です。
※市民割は丸亀市民が対象です。チケットご購入時に証明する書類(運転免許証、保険証など)のご提示が必要となります。団体割引を含み、他の割引との併用は出来ません。
◎お問い合わせ先:0877-24-7755(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)