初夢!再び復権を果たす四国の鉄道🚃《かがわコラム》

先に上場した本州のJR3社の最新決算(19年3月)はいずれも過去最高。コロナ禍に入った20年3月期の決算は大きく減収するであろうが、少なくとも昨年までは、人口減少も何のその景気がいい話が並んでいた。贅沢な観光列車を相次いで投入する余裕がある訳である。

その観光列車の先駆けとなったJR九州は一早く上場会社の仲間入りを果たした。北海道、四国と並んで鉄道事業の採算が厳しいと言われた“JR三島会社”では初の上場企業となったのである。

国鉄の民営化に際し三島会社は「経営安定基金」をあらかじめ政府が手当することで、その運用収益を赤字を埋め合わせる経営支援である。

営業キロ数はJR九州が2273km、対してJR四国は855km。ではなぜ九州だけが一抜けたとなったのか。九州新幹線をはじめ、特急列車から通勤列車まで鉄道業が本業なので、経営安定基金は必要。だがここ数年は収支が均衡し安定基金がなくても経営が成り立っていた。

それを支えるのが不動産業から流通業、ホテル業という別の顔である。利益の出にくい鉄道事業の赤字を埋めるサイドビジネスが順調に育ち、利益を出すようになったからという構図が見える。

最新の2019年3月期の決算内容でも、上場会社と非上場会社で二分化。

上場JR会社は軒並み過去最高の売上高を記録している。JR九州の19年3月期の連結決算は、鉄道旅客運輸収入がほぼ前年並みだったのに対し、駅ビル不動産収入が32億円増、その他事業収入が224億円増など終わってみれば対前年269億円の増収の大半がサイドビジネスとなっている。

また鉄道のような設備投資額が大きい企業で参考にするキャッシュ利益(EBITDA)が、同社の場合、不動産賃貸業が好調に推移し対前年35億円の増加。九州を中心にした駅ビル事業を基幹にオフィスビル・賃貸マンションを中心にした事業展開で、鉄道外収入のEBITDAがセグメント全体の約六割を占める。

 売上規模が大きい駅ビル事業の成否

駅ビルを中心とした駅周辺の開発計画は2019〜21年の中期経営計画で約1900億円の投資を予定。駅ビルを核にしたまちづくりにより鉄道そのものの収入増も見逃せない。大型案件の熊本駅ビル開発と同時に長崎駅・鹿児島駅の周辺開発がアクセルを踏む。

一方のJR北海道は赤字路線の廃線を進め、札幌駅ビル他の駅周辺開発を一段落。経営資源を北海道新幹線の開業をテコにした経営改革で上場を目指していたようだが、近年は安全性の問題が多く表面化している。

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レトロ感が魅力、リニューアルのJR琴平駅構内にあるシックな色合いの「セブンイレブンkiosk

JR四国については物販ではキヨスクのセブンーイレブン化が一段落。期待のホテル事業では高松駅前と高知駅前に新たな業態である「クレメントイン」を運営。今後は今治へも出店し多店化を図る。専業社とのコラボで始めた分譲マンション事業も、トキワ街に現在新規物件を建築中で更なる売上計上が図られる柱となりえる事業である。すでに岡山などエリア外でもマンション販売事業を始めた。

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鋭角のデザインが高松駅を降りると目の前に広がる。クレメントイン高松とJRホテルクレメント

JR四国全体の19年3月期の売上高は498億円。当期利益でわずかだが8億円を出すに留まった。JR九州の営業利益額よりも低い売上高だ。

JR九州は上場を控えた前期末をもって経営安定基金を取り崩した。それにより貸付料の支払いや減価償却費の負担が大きく減っていて、本業の鉄道事業でも黒字化が期待できる環境にまでになっている。

JR九州の上場に合わせて沿線の各自治体ではJR九州の株式を取得し、経営効率化への牽制役となってきた。「JR三島から二島」会社となったJR四国の行く末を心配する。

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全国的にも珍しい頭端駅でもあるJR高松駅。ホームとコンコースがシームレスに繫がっている。現在は居右側の建物が解体され駅ビル着工を待っている。

四国島内で駅ビル事業が今後展開出来るのは松山駅と高松駅である。ホテル事業は四国島外にも出て行く必要もあるが、コロナ後の市況を考えると難しく、四国内の展開には限りがある。マンション事業が一番、可能性が高い。JRが持つ遊休地で好立地の活用に限っても案件が出て来よう。

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JR琴平駅の外観。右側に観光列車「四国まんなか千年ものがたり号」の待合所がある。

このまま多角化もままならず、新幹線の期待もなければ鉄道事業をどうすべきなのか。四国4県としては廃線対象、バス転換も含め考えていく必要があるだろう。だが鉄路は日本全国とつながっている証し。単純にバス転換では図りきらない精神的な支柱。今一度、四国の鉄道に電車・列車が多く走っている光景を見てみたい。2021年の初夢。

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