都会で働いていたおなじみの通勤電車が、第2の人生での地方電鉄で輝いている🚃  〈かがわコラム〉

関東圏に住んだことがある人には、気軽に日帰りで行ける行楽地として今も昔も「箱根」は絶大な人気を誇る。箱根と聞くと、新宿から出発する「小田急のロマンスカー」をはずすことが出来ないアイテム。
国際観光地、箱根に向かうメインルートのアクセスとして歴史と伝統のある観光特急にふさわしい気品。運転席を2階に上げ、先頭が展望車両となっている独自性、東海道新幹線の原型に用いられた技術革新で、日本を走る私鉄電車の中でもトップのステイタスを誇る。

 そんなロマンスカーもそれぞれの時代に合わせた最新型の車両が常に投入されてきた。それに伴い旧型となった車両は通常運用から外れるが、プレミアムな車両ゆえその運用先は難しい。

 そんなところに目をつけ自社路線の看板車両として無償で譲ってもらい、新たに自社路線で特急電車として運行をしている会社がある。長野市の長野電鉄である。

長電長野駅に発車を待つ元小田急ロマンスカー
長野駅を起点に善光寺近く迄の都心部はいち早くに立体交差化を進めて地下化を果たしている地方鉄道では稀有な路線。門前町の長野市とスキーリゾートとして有名な志賀高原を結び、終点から数駅は地下鉄として運行している従来から先進的な取り組みを行っている地方鉄道である。

 志賀高原の玄関口である、湯田中との間には50年前より特急電車を走らせている観光路線としての側面。当時から使用していた車両の老朽化等により、代替車両への切り替えを目論んでいた。

大手私鉄が威信を賭けて建造した時代を先取りする車輌たち

 小田急では実はすでに戦前からロマンスカーという名称を使ってはいたものの、他社でも使われていた汎用句であったため、小田急の専属としてのネーミングが使われたのは1991年からだそう。
現在10000形と呼ばれた元小田急ロマンスカーは、今年で誕生からちょうど33年を迎えたが、今見ても全然古さを感じさせない現代風のデザインが際立つまさに傑作の鉄道車両である。

 長野電鉄では全部で4編成作られたうちの半分の2編成の譲渡をうけ、ローカル線区の仕様に合わせて11両編成から4両編成に改造したのちに長野市まで運んできた。

ポピュラーな外装などはあえて変えずに、小田急時代のイメージそのままで新たにネーミングを「ゆけむり」号としてさっそうと信濃路をひた走っているのである。

 特急料金は大人で百円と安く、客席は全席自由席のため最前部の展望席は早い者勝ちとなる。終点迄約45分。

 鉄道ファンではなくても首都圏在住者なら、普段通勤の途上に見かけたり、家族と箱根に行く時に乗ったことがあるあこがれのロマンスカーが、別の場所でがんばる姿を見てみたいと思うだろう。
箱根と渋温泉といういわば温泉つながりで活躍の場所を変えたロマンスカーであるが、展望席から見る風景は、その土地の新しい魅力発見にもつながることも期待され、観光面では大きなインパクトを与えていると言っても過言ではない。この車輌にまつわる記念グッズが多数販売されているという。

元JR東日本の成田エキスプレス

長野電鉄はほかにもJRの初代成田エキスプレスで活躍した車輌「スノーモンキー」や、元東急電鉄や営団地下鉄の通勤車両などが活躍し、高松のことでんと同じく大都市圏の鉄道車両の第二の人生を送る場所でもある。

観光準急「こんぴらさん」号の誕生を願いたい

 小田急とことでんは線路幅が違うので、次ぎに廃車予定となったロマンスカーをぜひことでんにという淡い期待は残念ながら難しそうだが、ぜひとも他の大手私鉄の引退車輌をことでん琴平線でも香川県最大の観光客を送客するための、金刀比羅宮参拝客向けの観光特急電車を復活させて、新たな名物として売り出すというのは出来ないものだろうか。

アルピコカラーを身にまとった元東武電車

一方、同じく長野県のアルピコ交通は、北アルプス登山の基地でもある松本市と上高地の玄関口である新島々とを結ぶ上高地線の今年、新車両を導入した。こちらは東武電車の通勤車輌を改造したもの。特急車両の導入ではないが、関東の人には懐かしい車輌のひとつである。

 富山県の富山地鉄でも元西武鉄道や京阪電鉄の特急車輌を譲渡してもらって運行している。
 黒部立山アルペンルートという観光路線ならではの楽しみになっているが、ことでんでも京浜急行や京成電鉄、京王電鉄とは線路幅が同じ(関西だと阪急や阪神、近鉄、京阪など)なので、そうした企業の引退車輌を購入することがもし可能であれば、是非、特徴のある車輌を導入検討してみてはいかがだろう。
観光の目玉になることは間違いない。ただ特急運転は待避線の有無など単線の線路の構造などで難しいかもしれないが。

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