社長「輩出率」、徳島県が直近調査で6年連続トップ
東京商工リサーチ調べによる、2023年の都道府県別の人口に対する社長の「輩出率」は、徳島県が6年連続で首位。阿波商人の気質を引き継ぐ県民性、大阪などの関西圏との交流の深さを反映しているようだ。また、2位には山形県1.15%(前回1.18%)、3位は香川県1.09%(同1.13%)が続き、上位5県を四国3県、東北2県が占めた。
社長の出身地と経営する企業の本社が同一の「地元率」では、沖縄県が92.5%と唯一、9割を超え、調査を開始以来、10年連続トップを守った。離島という地理的な要因や、観光と公共事業、基地への依存度が高い産業構造が地元志向に作用している側面もある。
香川県の社長輩出率は全国第3位(前回も第3位)
全国の都道府県で、社長「輩出率」は徳島県が6年連続でトップだった。人口比は1.35%(前回1.35%)。徳島県は堅実・実利を尊ぶ県民性といわれ、四国の一角でありながら古くから大阪との交流が深い。阿波商人に象徴される気質が育まれているともいえる。産業や観光・文化等の振興を目的とする「関西広域連合」に四国から唯一加わり、今もなお関西圏との関係は深い。
2位は山形県1.15%(前回1.18%)、3位は香川県1.09%(同1.13%)、4位は秋田県1.05%(同1.10%)、5位は愛媛県1.00%(同1.02%)の順。
6位の広島県0.9%(同0.95%)までは前回(2021年)と同じ順位だったが、1位の徳島県以外は前回より輩出率が低下している。社長「輩出率」は、社長の頑張りと同時に、企業数と人口動向も大きな要因になる。
一方、輩出率が最も低いのは、埼玉県で0.26%(同0.26%)だった。46位が千葉県の0.27%(同0.27%)、45位が神奈川県の0.33%(同0.33%)と首都圏の3県が占めた。次いで、44位は滋賀県の0.37%(同0.38%)、43位は兵庫県0.45%(同0.46%)と関西圏が続く。
下位5県は前回と同じ順位だった。神奈川県と兵庫県以外は、人口増加で分母が大きくなったため、輩出率が抑えられた側面もある。
なお、住民基本台帳人口によると、徳島県の人口は2023年1月1日時点で71万8,879人で、1年前より1.08%減少している。47都道府県の減少率は平均0.41%減で、人口減少が社長「輩出率」に影響した可能性もある。ただ、県外企業の社長に就くケースもあり、人口だけに結果を求めるべきではないようだ。
地区別の社長「輩出率」 四国が10年連続トップ
地区別の社長「輩出率」は、四国が1.07%(前回1.09%)で調査開始以来、10年連続でトップを守った。以下、東北0.89%(同0.91%)、北海道0.87%(同0.88%)、中国0.80%(同0.82%)、北陸0.76%(同0.79%)、九州0.69%(同0.72%)、中部0.62%(同0.64%)、近畿0.50%(同0.51%)、関東0.44%(同0.45%)の順。9地区全てで順位の変動はなかった。人口が集中する東名阪の大都市圏を含む地区では、「輩出率」が低く抑えられる傾向は変わらず。
社長「地元率」では香川県は第5位(85.9%)
出身都道府県内に本社がある企業の社長を務める社長「地元率」は、沖縄県が92.5%(前回92.8%)で、調査を開始以来、10年連続トップだった。47都道府県のうち唯一、9割を超えた。
離島という地理的条件に加え、「観光、公共事業、基地」が県内産業の核になっており、他県からの移住組より地元出身者が起業するケースが多いとみられる。
TSRが5月16日に発表した“2022年「全国新設法人動向」調査”では、県内の普通法人数に対する2022年の新設法人の割合が7.5%で、13年連続トップだった。コロナ禍前から、観光産業関連を中心に起業意欲が旺盛なことも地元率を高めたようだ。
「地元率」の上位は、2位愛知県89.0%、3位広島県87.3%、4位北海道87.1%、5位香川県85.9%、6位宮城県85.7%が続く。いずれも地方の中核都市で、域内ビジネスでは主導権を握るのに有利だ。
また、愛知や広島は自動車産業の集積地で、取引先や関連企業など裾野が広く、下請け企業の後継社長も多いとみられる。
一方、「地元率」が最も低かったのは、奈良県の64.9%。このほか、長崎県66.5%、兵庫県67.6%、佐賀県68.8%、山口県69.2%、鹿児島県69.5%が7割を切った。西日本勢が目立つが、逆に他県で活躍する社長を輩出する県ともいえる。
地区別の社長「地元率」、四国は82.9%
地区別の「地元率」では、北海道が87.1%でトップ。次いで、中部84.3%、四国82.9%、東北81.9%、北陸81.3%、中国81.1%、関東77.4%、九州77.1%、近畿74.2%の順。
社長「輩出率」は各都道府県の県民性もさることながら、人口動向や産業構造、地政学的な要因など幅広く影響する。2020年からのコロナ禍ではリモートが普及し、地方と大都市のビジネスへの温度差を解消した面もあり、地元での起業の後押しも期待される。
TSRが6月28日に発表した“2020-2023年大都市の「本社機能移転状況」調査”では、2020年から2023年に、東京23区や政令指定都市などの大都市から本社を転出した企業が、転入を上回ったが、愛着のある土地で起業を志す経営者が増えてくると、「地元率」に変化が現れるかもしれないと同社は結んでいる。
※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース約400万社の代表者データ(個人企業を含む)から、公開された出身地を抽出、集計した。なお、同一人物が複数の企業で社長を務めている場合、売上高の大きい企業を優先し、重複企業は集計の対象外とした。集計対象外企業は31万6,489社。
※ 都道府県別の社長数は人口に左右される面もあり、出身都道府県別の社長数と人口(総務省「住民基本台帳人口」2023年1月1日現在)を対比し、社長「輩出率」を算出した。本調査は2010年から集計し、今回が10回目。