地方を勝手に消滅させてはいけないのだ   《かがわコラム》

地方を語る際に必ず付いてくるキーワードが「消滅可能性都市」。

今から10年ほど前に最初に耳にした際には実に衝撃的なワードであった。

香川に住んでいるとにわかに信じがたかったが、機会があってお隣の徳島県に出向くと、実は「限界集落」というのは普通のワードとして日々使われていた。と言うよりも四国そのものがその危機にはるか前から晒されていることを、香川県民は認識していなかったというほうがいい。
何よりこれまで過疎とは無縁と思われた東京23区の中にも、消滅する区があることにも愕然とする。

それを受けて、安倍政権時代に掲げた政策のひとつが、「地方創生」である。当時、期待感は高まったが、地方独自のアイデアを短時間に形にして補助金に繋げるほどの熱意とクリエイティブな感性を持った公務員があまりいなかった。夢を形に出来る意欲の高さが成功のポイントとなるだけに、行政や政治だけに期待しては、実は地方は何も変わらないということが現在ではわかってしまった。

それに呼応するかのような「書店空白自治体」問題が浮き彫りとなった。いまや地方において新刊本を販売する書店の空白地域が、消滅可能性都市とリンクしていることが多いため、このことが一つの物差しにされているようだ。

そして気になる結果では、なんと町ではない「市」の中にも書店の空白となっているまちが全国に4つもあるという。

 当時、香川県は幸いなことに全国の都道府県では唯一、空白自治体がないという、素晴らしい結果であったので文化的レベルは維持されていると見なされた。印刷活字媒体が生き残る拠点をどう維持していくか。Amazon頼りでは文化レベルの維持は出来ないのだ。

確かにコンビニの書籍コーナーには、近年、週刊誌のみならず、月刊誌やビジネス誌などが充実していて、地方の書店の稼ぎ頭である雑誌の売れ行きを奪ったと言われる。
またアマゾンに代表されるネット書店で注文し、どんなに地方の住所でも確実に配送してもらえる利便性も大きい。

一足早くデジタル化が訪れている音楽販売業界のように、書籍も電子化され、パソコンやスマホの画面で見る時代が来ている。コミックなどは無料や一定金額で読み放題などのモデルが登場し、地方書店のもう一つの稼ぎ頭を奪う。

確かに身近にリアルの書店がなくなり、否応なくネットに頼らざるを得ない地方も増えているのは事実だ。
例えば、各自治体が運営する公立の図書館や、学校などの図書館でしか、書籍と直に触れる機会が確実に狭まってきているのはまぎれもない。

書店は大型化と地方を中心に古民家を改造したようなショップ化の2極化に

海外からの観光客が、どんどん日本の田舎に目を向け始めつつあった2019年。四国なども行ってみたいエリアで上位に来ていた。「爆買い」で有名だった中国人観光客の中も、急速に日本の伝統と文化を巡るツアーへの参加人気が高まっていた。
中国人ツアーの大都市圏や富士山中心のゴールデンルートが、地方都市へ向く流れもできはじめた。コロナ禍が終われば必ず訪日外国人の大移動がまた始まる。

明らかに一桁異なるボリュームだけに、地方の観光スポットや宿泊場所は、否応なく戦略転換も求められる。また外国人に魅力を発見されたことで、従来からの日本人観光客にとっても改めて違った形でその魅力をアピール、その場所を目指して訪れるという逆転現象にもつながっていた。

以前あるセミナーに参加した折、東京のムック本を発行する出版社の編集長の講演を聞いた。日本全国どころか、海外も飛び廻り、日本の地方にあるまだ磨かれていない素材達の魅力を、発信し続けている。(※残念ながら昨年、この出版社は経営破綻をしてしまったのは残念です)

一冊の本にまとめ出版する数々の経験談からは、四国に住む我々にも大変勇気づけられる話題ばかりであった。人口減少に悩む日本各地の自治体の中で、いち早くアイデア勝負で移住者の確保などに実績を上げている例が多くある。

「ディスカバージャパン」という雑誌のタイトルそのまま、日本全国の隠れた魅力を再発見する企画が次々に打ち出される。その企画・編集力に頼って、日本各地からサポートやプロデュースの依頼が舞い込む。活字媒体のもう一つの可能性にチャレンジしている姿は、我々にも考えさせられる点は多くある。

 宮脇書店総本店で以前開催されたのが「ニコニコ書店会議」という名のイベント。リアル書店の良さを知ってもらうため、ネット上とコラボし、イベントを書店で体験出来て、それを逆にネット配信する。
全国の地方の大型書店を中心に持ち回りで行われている。日頃、ネット世界で生きる若者達を実店舗に来てもらい、ネット中継すれば、書店がネットユーザー達のステージなるという試みであった。次の時代に向けた書店の挑戦が始まったとワクワクした。是非また開催をして欲しい。

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