【かがわコラム】東京オリンピックの熱狂。そして地方には何が残った?

前半戦の戦いが終わった「東京オリンピック」。

一時は開催が危ぶまれたが、国際的にも日本の開催能力に信頼を得られたようだ。ただしまだパラリンピックが始まる。ここまで感染拡大を見せつつあるコロナウイルスのこの後の感染状況がどう推移するのか全く読めない。しかも開催地の東京がその震源地だからだ。

開催する以上はどうしても成功裡に終わらせないと日本は何を言われるのかわからない。引くも進むものこの状況はまるで第二次大戦末期の日本のおかれた状況のようだという人もいる。

オリンピック後の日本の経済状況、ピークなき熱狂の後に訪れるリバウンド懸念も。

今年は“オリンピック景気”に沸いて、その後の反動には注意をしないといけない必要があった。いやすでに2019年には好景気は終わっていたという数字も見せられる。どちらにしても良いことは長続きはしない。

激変する世界情勢に日本はどちらの方向に向かっていくのか。まだはっきりとした道筋がついていないことにも焦りを感じる。

オリンピックのような大型のイベントを誘致すれば、それを目指し一致団結してがんばれるのが日本人の良いところ。ということで今後は大阪万博に向けての大型投資が議論される。確かに開催場所の近くは恩恵を受けることだろう。しかしこれも全くの未知数である。よもやウイルスが世界を席巻しようとは思わなかったが。

 そんなことよりも「AI時代」のこれからの産業構造をどうしていくのか。100年に一度の“ネオ産業革命”が起きようとしている。

そして日本が直面する本格的な人口減少社会の到来の恐怖。これまで当たり前だった常識が通用しなくなるそんな時代。我々現代に生きる日本人には異次元のことだらけの出来事が、これからこの国では起きようとしている。

そんな世界でも大都市の東京には、コロナ禍でも多くの人口が流入し、引き続きビルや橋の建設工事のラッシュが続く。一極集中する人口、世界から集まる資金を背景に、老いていく日本を一人引っ張っていく役割を負っていくのだろうか。

もしここに巨大地震等の天変地異が襲うと一気に機能不全を起こしたとき、日本は最貧国に転落するという研究者の話がある。国民生活はどうなってしまうのか全く想像も付かない。本気で政治家たちはこんなことも考えていてくれるのだろうかはなはだ疑問。まあ考えていないだろう。

もちろん東京がダメになったときに、単独で地方だけでは生き残るのも難しいのではなかろうか。そうならないため地方分権も単に行政機能だけを分散してもあまり意味がないのは明らかである。

やはり経済機能、いわゆる稼ぐ力を地方にも分散させていかないと、イザと言うときに地方が束になっても東京復興の力にもなれないで終わってしまう。

地方が生き残るための様々な示唆として、瀬戸内国際芸術祭が明るい未来を投影する

そこでコロナ前まで、地方でも成長株として注目を集めていたのが「インバウンド観光」である。欧州を訪れるとあまり有名でない地方の田舎町や村でも、昼間は意外なほど人通りが多く活気があることに気づく。そこには陸続きの欧州各地から訪れている観光客が存在しているケースが多いようだ。そうした“外貨”が地域を支えている国が実はいっぱいある。

インバウンド観光客がずっと年間一千万人弱に低迷していた日本も、ようやくここにきて“観光大国”の仲間入りを果たせた。年間3千人の大台に乗り、4千万人が見えて来ていた矢先の出来事。

東京オリンピックという千載一遇のチャンスを活かすことこそ、地方にとっては真剣に考えていくことかもしれないと思ったものだ。

そしてそのためにはしっかりと地域金融のシステムを守っていくこと。地域でお金を回していく循環システムが失われると、地域経済には大打撃となる。例えば長崎県内にある2つの地銀の統合に見通しが付いたことで、他の地方でもひとつの追い風となって、経営統合による地方銀行の経営の強靱化が鍵となってくる。コロナ禍で膨らんだ途方もない金額の融資金の回収というリスク要因だ。

そしてもう一つは地域で活躍する人財をしっかり教育し、活躍する場所を提供していくではないだろうか。

画像1

そうした意味でも香川県が中心となって10年前から始めた「瀬戸内国際芸術祭」はひとつ試金石になる。これまで挙げてきたことを実践する場となるからだ。

政治が掲げた本当の地方創生を目指すならば、香川県にとっては準備期間。人任せ、成り行き任せにせずにしっかりとした意志を持って、自分達の地域をどうしていきたいのかを県民ひとりひとりが考え行動していくこと。瀬戸芸ではそのことの大切さに気づかされた気がする。単なるアートイベントではなかった。

そんな地域にしていくこと出来たらならきっと明るい展望が開けていく。ぜひとも五輪終わったあとの地方の令和時代にもずっと輝いていける県土づくりを私たちは目指していかなければと思う。香川県はそういった意味では地方の新たな時代を創る実験の場である。

タイトルとURLをコピーしました