日本のユニコーンはまだ育って来ないのか?地方ローカルの可能性  《かがわコラム》

非上場の上場予備軍ながら企業価値が10億ドルを突破する有望なベンチャー企業を、伝説の生き物「ユニコーン」と呼んで、ここ5〜6年その存在が更に注目されている。あるアメリカの調査会社の調べではこうした企業が、世界中に141社あり、その多くは米国と中国国内に散らばる。

そのリストには相変わらず日本のベンチャー企業はなかなか入ってこない。日本では新規の株式公開(IPO)がいまだにゴールとされ、どうしても利益重視に走りがちだからとの分析がある。

新ビジネスの勃興自体は決してアメリカや中国と比べるても劣ってはいないと思うが、成長エンジンを吹かせる過程にはまだまだ差があると言わざるを得ない。可能性のあるアイデアをビジネスとして成功レベルまで引っ張り上げる、投資であったり支援環境が日本ではまだ揃っていないと言える。

 

ではそうした投資の環境は今後、変化をしていくのだろうか。もちろん日本のベンチャーキャピタルも発展を遂げており、その投資額も右肩上がりで確実に増えている。また起業家支援を行うインキュベータ企業も増えている。

アメリカの代表的なグーグル社は、自分達もベンチャー企業が出発点だけに、勘所を心得たベンチャー支援が可能となり、現在では投資を専門とした独立のグーグルベンチャー社が設けられが千億円以上を運用しながら、有望な投資先を抱える。そこからウーバーなどの次世代ベンチャー群が着実に育ってきている。

この会社が出来るまでは自社のビジネス戦略に関連する分野への投資が中心であった。これはというビジネスをスタートさせたベンチャーを次々にM&Aでグループ化してきた今がある。投資会社ではあくまでもリターンにこだわる。

日本においては当初、金融機関系のベンチャーキャピタル(VC)が中心となっていたが、ここのところ独立系や日本の名だたる企業が中心となったコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)の比率が増えてきている。また別のルートで地方創生の流れを受けた、地銀や信金系によるその地域に特化した地域ファンドの組成も目立つようになっていた。

そうした流れで見ると特徴として、スタートアップ企業の選別化がより進み、その分、一件1社当たりの投資額が大きくなってきているようだ。公的な機関も先頭に立ってベンチャー育成を旗印に各種の補助制度の充実を図る。特に地方ではそうした支援制度のお世話になる機会が結構多い。

今後は日本でもIPOとは異なる米国のようなM&Aによる、ベンチャー企業の買収案件も増えてこよう。

日本の地方を見渡すと、こうしたベンチャー育成に積極的な街の1つに九州・福岡市がある。ここの特徴は地元の大手企業と組んで、ベンチャービジネスの育成を図っていこうという取組だ。新規事業のタネを全国から募集して、一緒にビジネスを立ち上げる相手は、地元の大手鉄道会社の西日本鉄道や西日本新聞など歴史ある企業が名を連ねるというスキーム。

アメリカにおけるベンチャー投資は日本のそれと比べると40倍にも50倍にも及ぶという。この差をどう縮めるかのキーワードがこの“オープンイノベーション”と呼ばれる考え方である、企業は積極的に大学や他の企業と連携することで、自社に不足する技術やアイデアを補う。大学などが持つ知的財産も積極的に活用を図りつつ、社内での事業化に結び付けていく。

IT企業ではハッカソンと呼ばれる他社同士が集まって勉強会を開く文化がある。現在では情報もオープンソース、ビッグデータ化しているので、地域経済における“ハッカソン”を大手企業が率先して行い、ベンチャー育成にもつながる。

福岡県と監査法人のトーマツが結んだビジネス提案支援事業として行われている。前述の西鉄の他にも、JR西日本やNTT西日本、JTB九州等の大手企業が、新規事業や新サービスのテーマを発表しベンチャー側からアイデアを募る機会を設けている。

福岡は創業特区にも認定され、地方都市におけるベンチャー育成先進地として東京にも負けない環境が整ってくれば、ベンチャーマインド旺盛な経営者が集まる。自分達が持つビジネスプランを本当に実のあるものとして、ブラッシュアップ出来る環境。企業誘致だけではない経済活性化策を地元の香川県でも努力していく必要が官民挙げて求められている。

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