いつまでもイオン一人勝ちなのか?宮崎・鹿児島の地方都市に見る郊外型商業開発の行方🕍  《かがわコラム》

 

地方の風景に必ずあるイオンモールとマックスバリュのイオンSC

地域の中核企業の経営が行き詰まり、宮崎は不況のまっ只中に喘いでいた。そんな矢先に2005年突如、宮崎市郊外の農地に九州最大級をうたう超大型の商業施設「イオン宮崎SC(現イオンモール宮崎)」が誕生するという展開に、当時の宮崎市では激しい反対運動が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

                     イオンモール宮崎

いきなり中心市街地の年間販売額の実に半分近くに相当する売上目標を掲げた施設が郊外に出来るとなれば、地元商業者は死活問題となるわけだ。しかし無料駐車場四千台と東京など中央から初出店する人気専門店、子どもが走り回っても安全な広々とした店内などの魅力には誰も叶わない。

特に宮崎は有力な百貨店もスーパーもなく、街に魅力が感じられない若者を中心に、わざわざ博多まで買い物に出る人(フェニックス族)が存在する現実を見ると、福岡への消費の流失を防ぐという大義名分は成立する。

 

大幅増床、盤石のイオンモールの牙城 南九州に向かうところ敵無し

そして今度はお隣の鹿児島市に2007年、「イオン鹿児島東開SC(現イオンモール鹿児島)」がオープン。鹿児島も宮崎同様、従来は福岡・博多への消費流失が顕著に見られたが、新幹線の開通とイオンオープンに相前後して、大型のJR駅ビルや専門店を集めたフレスポのオープンなど、人気のショッピングビルが立て続けてオープンしこれまで無風状態であった市内の商業地図の旗色が変わった。

なんと言っても鹿児島市内の天文館商店街は高松同様、日本有数の長さを誇り、個店のレベルも高く年間で通行客は多い。山形屋という強力な地元資本の百貨店も存在感があり中心市街地の力が強い土地柄。そうした基盤があったのだが、郊外にあった空白を埋めるようにイオンが、初めての本格的な郊外型ショッピングセンターを登場させたのである。

一気に鹿児島の消費者が飛びついたのは想像に難くない。日本の大都市でも郊外の大型店の市場が未開拓だった唯一の都市と言っても良かったが、他都市同様に大型店進出を阻んでき地元商業者の障壁は簡単にこじ開けられた。

オリジナリティの溢れる個性的なショップが並ぶ、街の楽しさを感じるかと言えば、イオンSCのモールの画一的な売れ筋商品を並べただけの全国型の店が並ぶ様は、一見華やかで楽しい感じはするが、買い物が楽しいというには何か物足りなさを受ける。

南九州エリアではイオングループが実質こうしたタイプの店の展開では一人勝ちの現在、これはどうしようもないかもしれない。それは大型店の出店を規制する大店立地法によるところも多い。

すでに大規模店舗立地法が改正されてしまい、基本的には商業地域と一部住宅地域にしか出店ができない。そこにもし大型の工場が撤退した跡地があったり、郊外で田園地帯が土地区画整理を経て、農業から住宅や商業地域に指定替えされたりしない限り、大型店は出店が難しくなっている。

駅や商店街の再開発が活発となり、郊外の商業施設へ反転攻勢が

そこで規制に掛からない規模で出店の中心は、食品スーパーやホームセンターとドラッグストアに、商業施設面積にカウントされない飲食やゲームなどのサービステナントとの小規模ミックスなSCでお茶を濁している。

時代を経ても画一的で同じ建物のあまり変化ない、常に新鮮な魅力的買物場所を提供できなければ、いまや進化著しいネットショッピングとの競争に勝てなくなりそうだ。既にオープンラッシュは都市圏の都心部や準郊外地域だけといった様相になり、流通企業は軌道修正を迫られている。

もう地方に出来るのは大和ハウス工業系列のフレスポのような有名な専門店が軒を連ねるオープンモールと呼ばれる、駐車場を挟んだ専門店モールなどの、中・小規模ショッピングセンターばかりになるような気がしてしまう。いやすでにそうなってしまっている。屋内型のモールの時代は過ぎ去りつつある。

休日や正月は一家揃ってイオンに行くことが定番化。通称「イオニスト」と呼ばれるほどの社会現象。いわば地方のレジャーとなっており、地域色が薄れ寡占化が進む一部の勝ち組チェーン店ばかりしか我々は知らず、そこでしかリアル店舗で買い物が出来ないという状況は、日本の商業の発展やまち作りのステージでどうだろうと思ってしまう。

 

 

 

 

鹿児島・宮崎の中心部で大型の再開発案件が相次いで立ち上がり建設が複数進む

[まとめ]①宮崎や鹿児島は先にイオンモールが大型店を出店して、ライバル店舗の進出をする余地をなくしてしまった。②ここまで寡占化している地域ではなくても、全国でイオンのショッピングセンターが地域の食品以外の買い物ニーズを一手に引き受ける存在だ。③そのイオンモールも以前ほど出店意欲は高くなく、現在はららぽーとの開業が目立つ程度。またアウトレットモールは都市部で増えている。④鹿児島、宮崎ともに駅前、中心部で相次いで大型の再開発ビルの建設が行われ、商業、ホテル、業務機能が揃った新たな都市の魅力を放っている。郊外への消費者の移転を一定程度歯止めとなる期待。 

⑤当地にはイオンの商売敵として頑張っているイズミのゆめタウンが3店舗ある。イオンとゆめタウンでまだ選択肢があると言える。あとは岡山や神戸まで行かないと、最新流行のファッションやグッズを購入することができず、高速バスやマリンライナーで本州へ買い物に出かける行動力のある若い層やシニア層は引き留めることができていない。⑥人口が減少している中で、流行最新店舗が四国に出店をしてくれるのは淡い期待と言われそう。やはりリアル店舗での買い物に勝る楽しさはない。これ以上、似たような顔ぶれしか出会いが生まれない郊外の大型ショッピングセンターではすでに消費者の関心が薄らいでしまって、消費行動に結び付いていかないのではないか。

 

 

タイトルとURLをコピーしました