瀬戸内海を挟んで流通業界の陣取り攻防戦が始まった  《かがわコラム》

四国と中国で共にシェア争いを繰り広げてきたローカルスーパー企業の「マルナカ」「フジ」であるが、今や共にイオン連合の一員として、関係が強固なものになっている。10年前には予想もつかない展開になっている。

日本の流通業界を牽引しているイオングループがローカルごとの運営会社を一本化に向けて動きだし、中四国地方においては「マックスバリュ西日本」が中心となっている。

「イオン」は、全国の6エリアの事業会社をそれぞれ再編すると発表して、確かにこれまでの幾多の流通戦争の歴史の中で、群雄割拠してきた企業がいずれも経営不振に落り、イオンがその受先になっていく中で、いつの間にか様々な地域企業と大きな固まりとなっていく過程を辿る。

「ダイエー」「マイカル」が破綻した際には、受入企業のイオン業態も店名も異なる多くの流通店舗群を抱えることになり、それをどういった形で運営を一本化して消費者にとり、分かり易く再編成するのだろうかという疑問が常にあった。

その総仕上げとなってイオンが四国のスーパー雄「フジ」との資本業務提携、経営統合というニュースであった。

 

フジとの合併で中四国地方に売上7000億企業が誕生

これまで四国における愛媛県では最後の攻防という名に相応しい「フジ」と「イオン」の陣取り合戦は激しかった。現在、フジの稼ぎ頭ともなっている、松前町の「エミフルMASAKI」も実はイオンと出店を争った場所であるのは有名な話。

対抗するイオンモールは直近で、今治市に「イオンモール今治新都市」をオープンしていて、新居浜市のイオンモールとの二面作戦で県都松山市進出を伺う間際といった構図となっていた。

実は「イズミ」も愛媛県とは浅からぬ縁がある。その昔、商店街の入口にあったのがイズミ松山店。その後、名前はラフォーレに変わっていたが、市街地すぐにあったJT松山工場跡地の入札にイズミが権利を得たことで、情勢が変わった。

何十年ぶりに大型のゆめタウン店を愛媛県の県都に出店する、という悲願を達成したかに見えた。しかし途端に起こった中心商店街等の出店反対運動がとても激しくて、やむなく出店を白紙に戻したという因縁があった。

予断だがこの敷地には後に広島市のマンション企業に売却されて、半分が地元のホームセンターがフジと共同出店していたというおまけまでついた。全く解せない経緯だ。

これで既存のイオングループの食品スーパーである「マックスバリュ西日本」「マルナカ」のグループ売上の約四千億円を足すと七千億円近くなり、中四国九州での永遠の宿敵である「イズミ」の売上規模で並ぶことになった。

売上高一兆円企業構想を掲げひた走るイズミ

対するイズミも着々と中四国九州エリアで地域スーパーを傘下に置きながら、事業拡大を進めているのはご承知の通り。。イオンと市場を二分する二大流通企業のセブン&Iホールディングスとの提携も実現。また地元香川県のマルナカの永遠の商売敵であった「マルヨシセンター」と資本業務提携。結果、中四国をエリアとする二つの大流通企業グループが誕生するということになった。

思えば「フジ」はもともと広島の繊維卸会社である「十和」がルーツ。そのときすでに広島には同じく繊維会社の「山西」が運営する「イズミ」があったから、あえて被らない対岸の松山市でスーパー事業をスタートさせたという逸話が残っている。

その後はお互い瀬戸内海を挟んで片や中国地方、片や四国地方一円で出店を重ねていく。

イオン系のドラッグストア進出で食品スーパーもシェアを奪われる構図に

フジが本拠地としている四国では、愛媛に「ママイ」「セブンスター」他、地場スーパーが林立。香川で「マルナカ」や「マルヨシセンター」、徳島に「キョーエイ」や高知に「サニーマート」が強い。広島ではイズミ他、「ハローズ」「エブリイ」等、地場のスーパーとの競争にもまれながらも、山口、広島、香川、徳島の瀬戸内圏のローカルスーパーとしては異例の三千億円企業へと成長を遂げる“リージョナルスーパー”となっていった。

片やイズミは中国地方から香川県そして、北部九州戦略が当たった。中でも当時九州一円に店舗を構え市場を三分していた「ユニード」「寿屋」「ニコニコ堂」がいずれも経営危機となり、それを引き継いだのがイオングループのイオン九州と、イズミである。その後の壮絶な陣取り合戦も業界では語り草となった。

現在、香川県だけを見てみると、山陽勢の食品・ディスカウント業態の「ハローズ」や「ラムー」「エブリイ」が勢力を拡大中。

またドラッグストア業界では、松山のフジグループの「レデイ薬局」勢に岡山の「ザグザグ」や、先日ウエルシア系列に入った福山の「ひまわり」に今秋、ウエルシア薬局が本格進出する。九州福岡から上陸し店舗数を増やしている、食品に特徴があるドラッグストア業態の「コスモス」他、いずれも“カテゴリーキラー”と呼べる価格破壊力を持つチェーンストアが力を付けてきている。

総合スーパーには当然、全ての機能が備わっていても、その存在を脅かす新勢力の専門店が、大量出店を重ねながら勢力地域を拡大。垣根がほとんどなくなったスーパーとドラッグストア。そこにホームセンターが合体するスーパーセンター、ディスカウント業態の佐賀から「ダイレックス」が店舗数を拡大中。

業界大手の一角にあった「ユニー」のドンキホーテグループ(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)入りも、大型店の栄枯盛衰を物語る出来事となった。

まとめ

今後はまだ中小のスーパー企業がどちらかのグループ入りをすることも十分に考えられる。現在の状況は外食の費用がそのままおうち時間を過ごすスーパーの食材購入に移っているが、アフターコロナになると、店舗運営と販売力が差となり業績の二極化に向かうのではないか。

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