【香川県高松市】不動産業で直面した課題に向き合う ㈱エスレーヴが耕作放棄地で自然農法に挑戦

 高齢化や後継者不足により、耕作放棄地の増加が深刻な社会問題となっている。これにより、土壌の劣化や周辺の農地・住環境への悪影響など、多くの課題が生じており、早急な対応が求められている。

 不動産売買、土地分譲、仲介の㈱エスレーヴ(高松市前田東町 津村江里子社長)は、不動産業を通じて耕作放棄地の現状に直面し、「自分たちにできるかたちでこの課題に向き合いたい」との思いから、農業・食品分野への参入を決意。自ら放棄地を取得し、農業事業をスタートさせている。

 

耕作地は三木町に広がる阿讃山脈の麓にあり、いまは約2,500平方メートルの畑と約25,000平方メートルの水田がある。そこで、農薬・除草剤・化学肥料を使わない自然農法を取り入れ、環境と共生する持続可能な農業に取り組んでいる。

 

レーヴ農園と名付けた農園では玉ねぎ、にんにく、枝豆など約30種の野菜、2種類のうるち米、もち米を栽培中。

自然農法を啓発・実践し環境保全型農業に取り組む、さぬきつむぎの会に参画。会のメンバーに協力を仰ぎ、津村社長も本業の合間を縫って農地での作業に汗を流している。

 

参入3年目にして、高松の自然食品店「春日水神市場」での販売が始まり、着実にファンが広がり、もち米「やわ恋もち」など人気商品も育ってきた。企業から贈答ギフトとしての注文も増えているという。

とはいえ、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。津村社長は「人手不足、天候リスク、安定的な収穫、品質の確保、そして自然農法という時間と労力、コストを要する栽培方針は試行錯誤の連続。地域の方や生産者仲間に支えられここまで道を切り拓けた」と述懐する。

 

自然農法とは、土中の微生物や昆虫、雑草といった自然の力を活用して栽培する農法。化学的な手段に頼らず、自然の循環の中で土を育てるもので、昔ながらの知恵と経験に裏打ちされた技術が必要とされる。

津村社長は今後について、「生産者との連携をより深め、品質を高めた新たなブランド米の開発にも取り組んでいきたい。いずれは『受賞する米』として、地域を代表する存在に育てたい」と語る。また、米や無農薬野菜を活用した加工食品の開発にも力を入れていく考えだ。

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