【中四国地方最大規模】スポーツ大会から、アリーナツアー、見本市イベントまで多目的利用を想定。新香川県立体育館が間もなく着工へ

サンポート高松の北側街区に計画が進む新県立体育館。2018年に行われた基本・実施設計業務公募型プロポーザルにおいて、選定された有限会社SANAA事務所(東京都)は、基本設計の過程で県や県議会と調整を重ねた末に、要望を取り入れ実施設計に仕上げたものとして県がこのほど公表している。

それによると新体育館は大きく①様々な用途に利用出来る多目的アリーナ②最大収容人数は中四国最大級の一万人③交流エリアを設けた新しい発想のアリーナ④サンポートの環境に調和した利用し易い施設の特徴を持つ香川県の中核に位置づけた体育館として県都高松市のまさにシンボルになる大型公共施設である。

香川県提供     〈新県立体育館へのアクセス利便性向上のために検討している
                              キャノピー等の整備については、パース上は示していない〉

高松市に待望の中四国最大規模となる多目的アリーナが間もなく誕生する

まず体育館の最大の役割スポーツは、地域の大会から全国大会、国際大会まで幅広いレベルの室内競技に対応するほか、気軽に体を動かしたり、レクリエーションを楽しむ市民スポーツ、生涯スポーツの場としても利用できる。

スポーツ目的以外にも、トップアーティストによるコンサート・アリーナツアーや、MICE(会議や展示会)などのビジネスイベントの利用を通じて、香川の交流人口の拡大、拠点とした役割も果たす。
館内は東側にメインアリーナ中央にサブアリーナ、西側に武道施設兼多目的ルームがあり、利用者数やイベントの規模によって、単独でも一体でも利用できるシームレスな構造体を採る。組み合わせ次第で使用用途は多岐にわたる。

メインアリーナの固定席は5024席で、広島県立体育館(グリーンアリーナ固定席約4700席可動席920席)の座席数とほぼ同規模の中四国最大の収容人数を誇る。約870席の移動式可動席を導入。イベントの形態に沿って、任意の場所に配置、最大では約1万人の収容を誇る大きなハコとなる。

メインとサブアリーナをつなぐ交流エリアは、観客席上部に壁を設けないことで、競技フロア、観客席、ロビーが一体化した新しい空間に仕上がっている。アイデア次第で幅広い使い方が可能で、スポーツの全国大会規模は館内を一体的に運営、イベント時には交流エリアに物販コーナー等で利用する。

海への眺望も開けた北側は単独での利用も可能で、キッチンカーも乗り入れる高さを確保。カフェなどの設置も予定しており、イベントが開催されていない時は、メインとサブアリーナの間に出来た空間は、常時、多目的広場から瀬戸内海に通じる通路として県民に開放され、北側街区が従来から担ってきた憩いの場としての役割は建物が完成してもそのまま引き継がれるつくり。香川県提供

背景となる瀬戸内海にも高松市街地にも映える特徴的な外観になる

建物の外観は、サンポートの景観を損なわないように、高さを最高約27mと低く抑えた曲線状のしなやかなデザインで、陸からも海から見ても周辺環境と調和し、穏やかな瀬戸内海の景観にマッチするように設計されている。

円形の体育館周辺には階段やスロープ、車寄せを設けて、どの方向からでも近づきやすい設計となっており、建物の周遊も楽しめるユニバーサルデザインを採用する。

スポーツの殿堂となる新体育館のメインアリーナは、主要な室内競技に対応したさまざまな設備を導入。照明設備はLED照明で競技種目に応じた照度設定が可能で、空調は大空間における空調効率が高い「居住域空調方式」を採用。

人が活動する空間では著しい温度のムラが生じず、効率的に温度を調整する仕組みになっている。
送風口の配置や送風温度、風速・風量の設定は、バドミントンなど風の影響を受けやすい種目に配慮。複数コートを設定した場合でも、バドミントンの世界大会で採用されている国際基準(風速0.2メートル/秒)をクリアしている。

香川県提供

香川を素通りして悔しがったアリーナツアーは過去の話に?音楽の殿堂にも最適な音響

アリーナ等の大規模空間では、発生した音が壁などに反射し、遅れて聞こえる「ロングパスエコー」など音響障害が生じやすい。新体育館では、アリーナと交流エリアの間に壁を設置しておらず、アリーナ天井面などに吸音材を配置することで、このロングパスエコーなどの音響障害を低減し、半屋外のような反響の少ない快適な音環境を実現した。

スポーツ大会時などで臨場感を損なわない配慮、スポーツ開催時は木製の床(ポータブルフロア)が設置されているものの、コンサートの開催時に大型トラックやフォークリフトで、機材が搬入できるようにコンクリート床で、ステージ設営がしやすい天井沿いのキャットウオーク配置をしたほか、床に電源供給ピット、壁面に電源盤やガスの取り出し口、給水設備を配置するなど、スポーツイベントに限定しない多目的な利用を想定している。例えば下のイメージにあるような、飲食イベントや展示会などにも利用可となっており、サンメッセ香川との棲み分けを図りながら、交流人口の拡大に貢献する施設となる。

香川県提供

コロナ禍による環境の激変に対応、設計時に急遽コロナウイルス感染対策に向けた配慮

新型コロナウイルス感染症の影響により、換気については基本設計から大きく変更。各居室の機械換気は、新型コロナウイルス感染症対策として厚生労働省が推奨値である1人当たり30立方メートル/時を確保し、メインアリーナ、サブアリーナの更衣室、会議室などに換気用の窓を設置する。ホワイエに直結する出入口を新たに設け、換気機能の向上を図った。

旧県立体育館の老朽化に伴い、14年9月末で閉館してから約7年が経った。新県立体育館は今年度から建設工事に取り掛かり、24年度中に誕生を予定する。

【メインアリーナ】固定席5024席(別途車いす席28席)移動式可動席870席程度の利用可、最大収容人数1万人。最高天井高27・6m。

【サブアリーナ】固定席1002席(別途車いす席8席)

【武道施設兼多目的ルーム】固定席327席(車いす席18席)

《基本設計概要》建築面積/18950㎡、延床面積/31212・5㎡、構造/鉄骨造・鉄筋コンクリート造、駐車場/東68台・西32台、建設工事/令和3年度〜6年度、建設工事費/186・0億円(税込み)

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